脊髄の解剖と働き(51A53)

脊髄の解剖

脊髄について正しいのはどれか。

  1. 下端は第5腰椎まである。
  2. 後根は脊髄神経節をつくる。
  3. 終糸は尾骨前面に付着する。
  4. 中心菅の周囲に白質が存在する。
  5. 脊髄円錐は脳と脊髄の移行部である。







目次

過去の出題傾向

押さえておきたいPoint!!

  • 脊髄の上端と下端の位置
  • 神経膨大部
  • 脊髄の横断面の解剖
  • ベル・マジャンディーの法則(運動神経と感覚神経の入出力)
  • 椎間孔を出る脊髄神経(前根と後根、前枝と後枝の位置関係)
  • 脊髄の機能(伝導路・反射・自律神経)

脊椎の構造

脊椎(脊柱)は椎骨が連なって形成されており、体幹の軸として頭部と体幹を支えています。

脊椎はS字の生理的湾曲があり、加わる力を分散する構造になっているため、体重を支えるのに有利な構造になっています。

この椎骨は、頭側から7個の頸椎12個の胸椎5個の腰椎5個の仙椎(仙骨1個)3〜6個の尾椎(尾骨1個)からなっています。

椎骨の形はほとんどで同じ形をしていますが、第一頸椎と第二頸椎は特別の形をしています。

仙椎と尾椎はそれぞれ複数の椎骨が癒合して出来た骨のため、(仙骨1個・尾骨1個)という記載にしています。

椎骨の数脊髄に出入りする脊髄神経の数は異なるため間違えないようにしましょう。

椎骨

出典:脊椎のしくみとはたらき|関節とは | 人工関節と関節痛の情報サイト 【関節が痛い.com】

脊椎(脊柱)の数

頸椎:7個 
胸椎:12個
腰椎:5個
仙椎:5個 (仙骨1個)
尾椎:3〜6個 (尾骨1個)

脊髄

脊髄は柔らかいゼラチン状の白い器官で神経繊維が縦に連なっており、さまざまな伝導路を形成しています。

「さけるチーズ」を指で縦方向に裂いてみるとイメージしやすいです。

あの一本一本が神経繊維であり、運動神経や感覚神経の伝導路になっています。

脊髄は脊椎の椎孔という穴の連続でできる脊柱管というトンネルの中に存在しており、上端は環椎と後頭骨の高さで大後頭孔で延髄から始まり、下端は第1,2腰椎の高さで脊髄円錐となって終わります。


その長さは約40㎝、直径約1㎝前後ありほぼ小指大の大きさです。

脊髄円錐の下端からは終糸と呼ばれる細い糸状の構造物が尾骨の背面まで伸びています。

終糸は脊髄を固定している組織の一つであり、脊髄に比べて伸長性の富んだ構造をしています。


終糸が伸長されたときは、ゴムと同じような特性で元に戻ろうとしますが、脊髄が伸長された際はある地点から物理的破綻をきたしてしまいます。


脊髄円錐、終糸

出典:脳・神経系│からだのしくみを調べる – 医療総合QLife



脊髄は脊髄に出入りする脊髄神経に対応して頸髄・胸髄・腰髄・仙髄・尾髄に区分されています。

脊髄神経

脊髄は、上から頸髄(C)、胸髄(T)、腰髄(L)、仙髄(S)、尾髄(Co)の5部31節に分けられます。

  • 頸神経(C1〜C8)
  • 胸神経(T1〜T12)
  • 腰神経(L1〜L5)
  • 仙骨神経(S1〜S5)
  • 尾骨神経(Co1)


頸神経が頸椎の数より一つ多いのは、第1頸神経が後頭骨と第1頸椎の間から、第8頸神経が第7頸椎と第1胸椎の間から出ているためです。

胸神経以降は、対応した脊椎の椎間孔から出るため、頸神経のみ1つズレると覚えておきましょう。

●第1頸椎の椎間孔からC2が出る
●第1胸椎の椎間高からT1が出る



脊髄神経のそれぞれの番号の神経は、それに対応する番号の脊椎の番号から出るため、頸神経や胸神経などの上位の神経走行は真横に走ります。


しかし、脊髄の下端は第1,2腰椎の高さで脊髄円錐となって終わるため、それ以下の腰神経や仙骨神経は脊柱管の中で馬の尾のように長く伸び、対応する番号の脊椎から出ます。


そのため下位の神経走行は下方に向かっています。

この部分は馬の尾に似ていることから馬尾(馬尾神経)と呼ばれています。

終糸と馬尾は間違いやすいので、この違いを理解しておきましょう。


胎生3ヶ月時点では脊髄と脊柱管の長さが同じであり、各脊髄神経は水平に走り椎間孔を出ます。

しかし、成長が進むにつれ脊髄より骨(脊柱管)の方が急速に成長するため、脊髄神経と椎間孔の位置がズレ、脊髄神経の出る位置は下方になってしまいます。

これを「脊髄の位置の相対的な上昇」といいます。



麻酔薬の注入や脳脊髄液の採取のために腰椎穿刺する場合は、脊髄損傷を避けるため第3〜4腰椎の間で行います。


脊髄の下端は脊髄円錐(第1,2腰椎レベル)であり、それ以下であれば終糸や馬尾は走行していますが、針で脊髄を傷つける心配はありません。


臨床場面では左右腸骨稜の最高点を結んだ線(ヤコビー線)が第4腰椎に相当することから、これを目安に第3/4腰椎の間、もしくは第4/5腰椎の間に腰椎穿刺を行います。


腰椎線維とは…

背中からくも膜下腔に針を刺して脳脊髄液を採取し、性状や脊髄圧を調べる検査です。
髄液腔に薬剤を注入する治療を行うときもあります。



脊髄の太さは一定ではなく、体肢の発達のため上肢や下肢の支配神経が出入りするところは、神経繊維が密集しているため太くなっており、それぞれ頸膨大部腰膨大部と呼ばれます。


この膨大部から出発する神経は蜘蛛の巣状に絡んでおり、「叢」を形成します。


頸膨大部は、頸神経叢(C1〜C4)と腕神経叢(C4〜T1)をつくり、腰膨大部は腰神経叢(T12〜L4)と仙骨神経叢(L4〜S5)を作っています。

なお、胸神経の領域では神経叢をつくらず、肋間神経として分布しています。

脊髄の横断面

脊髄の横断面は中心に中心菅があり、表層部の白質と、深部の蝶が羽をひろげたような形(H字型)をした灰白質からなります。

側角横断図

出典:筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因はヘルペスである2020.2.4更新 | 医学博士 Dr.松本のブログ



灰白質には神経細胞が集まり、前方への突出部を前角、後方への突出部を後角といい、胸髄では前角と後角の中間部が側方に突き出している部分を側角といいます。


前角では運動神経、後角には感覚を中継する神経細胞、中間部には自律神経細胞が集まっています。

これを立体的にみると、それぞれ柱状になっており前柱側柱後柱と呼びます。

脊髄は前正中裂と後正中裂によって左右に分かれており、左右はされに前外側溝、後外側溝により白質は前索側索後索の3索に分かれています。


脊髄後索はさらに内側部分が薄束、その外側が楔状束に分かれます。


後根から入った感覚神経線維は、脊髄後索を上行しますが脊髄にも体部位局在性があり、このふたつの部位のうち、薄束が下肢からの情報を運ぶ神経線維の集まり、楔状束が上肢からの情報を運ぶ神経線維の集まりになります。


そのため楔状束は、下部の脊髄には見られず、およそ第6胸髄の高さから始まります。

脊髄神経は後外側から入る後根と前外側から出る前根があり、入出力に関して、感覚性(求心性)線維は後根から入り、運動性(遠心性)線維は前根から出ます。


これの後根から神経情報が入り、前根から神経情報が出る一連をベル・マジャンディーの法則といいます。

前根と後根はすぐに合流して、椎間孔から脊椎間の外に出ます。
一方、後根には、感覚神経の細胞が集まる脊髄神経節という塊を形成します。




脊柱管を出た脊髄神経は、再び前枝と後枝の2つに分かれます。

そこから、頸部と体幹の前部と外側部および四肢の筋、関節や皮膚に向かう筋枝、関節枝や皮枝を出します。

なお、前枝は体幹の側面・前面および体幹の皮膚や筋に分布し、後枝は体幹後面の皮膚と脊柱起立筋を支配します。

前根、後根、椎間孔

出典:前根と後根からなる神経の構造 著者:TristanbとMysid(Hatsukari715による翻訳)CC 表示-継承 3.0
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Spinal_nerve-ja.svg


脊髄の働き

脊髄の機能は様々ですが、ここでは①上行性・下行性伝導路 ②脊髄反射 ③自律神経について解説します。

上行性・下行性伝導路

脊髄は脳からの指令を抹消に伝える役割があり、

中枢の興奮を抹消の筋に伝える下行性伝導路(遠心性伝導路)
抹消の受容器からの刺激を中枢に伝えるもので、皮膚感覚・深部感覚・嗅覚・視覚・聴覚・味覚などの上行性伝導路(遠心性伝導路)

の2つがあります。

下行性伝導路(遠心性伝導路)

遠心性活動電位は2本の神経(第1次、第2次)を経由して大脳皮質から骨格筋に下行します。

第1次運動神経細胞体は大脳皮質前頭葉の中心前回にあります。

脳内を下行する際に内包を通過し、脊髄の前角で第2次運動神経細胞体にシナプスを形成し、前根から脊髄を出て、骨格筋を支配します。


下行性伝導路は錐体路錐体外路の2つがあります。

錐体路

骨格筋の随意運動を支配する伝導路で皮質核路と皮質脊髄路の2つがある。

皮質核路(皮質延髄路):眼球運動、咀嚼運動、表情運動、嚥下運動に関与する伝導路
皮質脊髄路:皮質核路以外の全身の骨格筋運動に関与する伝導路

錐体外路

骨格筋の運動や筋緊張、筋群の協調運動など反射的・不随意的に支配する伝導路


>>下行性伝導路の解説はこちらから


>>上肢・下肢・体幹・顔面神経の走行経路の解説はこちらから





上行性伝導路(求心性伝導路)

求心性活動電位は、各受容器から3本の神経(第1次、第2次、第3次)を経由して大脳皮質に上行します。

第1次感覚神経細胞体は後根の脊髄神経節にあり、第2次感覚神経線維が左右の正中線を交叉して対側の脳へ上行する。

視床で第3次感覚神経線維にシナプスを形成し、感覚神経線維は内包を通過してから、大脳皮質頭頂葉の中心後回に投射します。


脊髄視床路:皮膚の温度感覚・痛覚、触覚の一部を視床に伝える伝導路
後索路:深部感覚、触覚の一部を延髄に伝える伝導路
脊髄小脳路:運動や姿勢維持などの調整に関与する伝導路




>>体性感覚(皮膚感覚・深部感覚)の伝導路の解説はこちらから




脊髄反射

一方で、抹消からの感覚情報が脳へ上行することなく脊髄分節レベルで運動神経に変化される脊髄反射があります。

例にあげると、熱いものに触れたときに咄嗟に手を引いたり、転んだ時に瞬間的に手が出るなどの行動が脊髄反射になります。


脊髄反射

脊髄反射は皮膚(1〜3)や腱(4〜6)の反射がみられます。

  1. 腹壁皮膚反射:腹壁の皮膚を擦ると腹直筋が収縮する。
  2. 精巣挙筋反射:大腿部の上内側をこすると、刺激された側の精巣挙筋が収縮して精巣が挙上する。
  3. 足底反射:足底を擦ると足の指がすべて足底屈曲する。
  4. 膝蓋腱反射:膝蓋腱の上を軽く叩くと大腿四頭筋が収縮し、時には同時に足底屈曲がおこる。
  5. アキレス腱反射:アキレス腱の上を叩くと腓腹筋が収縮し、ときには同時に足底屈曲が起こる。
  6. 上腕二頭筋腱および上腕三頭筋腱反射:上腕二頭筋腱を肘窩で叩くと前腕が屈曲し、上腕三頭筋腱を肘頭付近で叩くと前腕が伸展する。




自律神経

交感神経と副交感神経の節前線維の細胞体は中枢神経内にあります。


交感神経節前線維の細胞体は胸腰髄(T1〜T12、L1〜L2)
副交感神経節前線維の細胞体は中脳、橋、延髄、仙髄(S2〜S3)にあります。


交感神経節前線維は脊髄の外側から出て、交感神経幹という神経の束に入ります。

この束は交感神経の神経節が並んでいます。

ここから交感神経節後線維となり各臓器など全身に分布し情報を伝えています。

副交感神経は神経幹を持ちません。


脳幹・脊髄から出た副交感神経節前線維は心臓や直腸など副交感神経支配の効果器の直前、もしくは効果器内で副交感神経節後線維になります。

脊髄 自律神経

出典:B 自律神経による調節


解説

1.下端は第5腰椎までである。 ×

脊髄は脊椎の椎孔という穴の連続でできる脊柱管というトンネルの中に存在しており、上端は環椎と後頭骨の高さで大後頭孔で延髄から始まり、下端は第1,2腰椎の高さで脊髄円錐となって終わります。

脊髄円錐の下端からは終糸と呼ばれる細い糸状の構造物が尾骨の背面まで伸びています。



2.後根は脊髄神経節をつくる。 ○

脊髄神経は後外側から入る後根と前外側から出る前根があり、入出力に関して、感覚性(求心性)線維は後根から入り、運動性(遠心性)線維は前根から出ます。

前根と後根はすぐに合流して、椎間孔から脊椎間の外に出ます。

一方、後根には、感覚神経の細胞が集まる脊髄神経節という塊を形成します。

抹消で受容した感覚情報はこの脊髄神経節を経由して中枢神経へと伝達されます。



3.終糸は尾骨前面に付着する。 ×

脊髄円錐の下端からは終糸と呼ばれる細い糸状の構造物が尾骨の背面まで伸びています。

終糸は脊髄を固定している組織の一つであり、脊髄に比べて伸長性の富んだ構造をしています。

終糸が伸長されたときは、ゴムと同じような特性で元に戻ろうとしますが、脊髄が伸長された際はある地点から物理的破綻をきたしてしまいます。



4.中心菅の周囲に白質が存在する。 ×

脊髄の横断面は中心に中心菅があり、表層部の白質と、深部の蝶が羽をひろげたような形(H字型)をした灰白質からなります。




5.脊髄円錐は脳と脊髄の移行部である。 ×

脊髄円錐は脳と脊髄の移行部を指すものではなく、脊髄の下端の円錐状になっている部分をさします。




類似問題

38-11 脊髄について正しいのはどれか。

  1. 脊髄には3つの膨大部がある。
  2. 下端は、第3,4腰椎レベルにある。
  3. 後角は運動神経細胞が密集している。
  4. 白質は前索と後索の2つの索に区分される。
  5. 灰白質は横断面でH形の灰白柱をつくる。

36-12 脊髄について誤っているのはどれか。

  1. 頸膨大の最大部は第6頸髄節に位置する。
  2. 下端は第3〜4腰椎に位置する。
  3. 前根と後根は合流して椎間孔を通る。
  4. 横断面での灰白質はH字状である。
  5. 反射中枢がある。

30-5 脊髄について誤っているのはどれか。

  1. 中心菅は灰白質にある。
  2. 側索は白質にある。
  3. 前角は灰白質にある。
  4. 膨大部は胸髄にある。
  5. クモ膜に覆われている。

30-6 脊髄と脊椎について誤っているのはどれか。

  1. 脊髄と延髄との境界部は環椎上縁の高さにある。
  2. 頸髄から出る脊髄神経は7対である。
  3. 第12胸神経は第12胸椎と第1腰椎との間の椎間孔から出る。
  4. 脊髄円錐は第1腰椎の高さにある。
  5. 頸髄と比較して仙髄から出る根は脊柱菅内を通る距離が長い。

29-6 脊髄について誤っているのはどれか。

  1. 2つの膨大部がある。
  2. 下端は第1,2腰椎のレベルにある。
  3. 白質は灰白質より神経細胞体が多い。
  4. 運動神経細胞は前角にある。
  5. 交感神経は胸髄と腰髄から出る。
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