錐体路(上肢・下肢・体幹・顔面神経)の走行経路を皮質〜脊髄までの脳画像から解説

錐体路の走行経路(上肢・下肢・体幹・顔面神経).001

外側皮質脊髄路について正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 後索を通る。
  2. 延髄で交叉する。
  3. 運動前野からの投射線維を含まない。
  4. 脊髄で前角細胞にシナプス結合する。
  5. 上肢に対応する線維は下肢に対応する線維よりも外側にある。







目次

解説

後索を通る。 ×

脊髄の横断面は中心に中心菅があり、表層部の白質と、深部の蝶が羽をひろげたような形(H字型)をした灰白質からなります。

側角横断図

出典:筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因はヘルペスである2020.2.4更新 | 医学博士 Dr.松本のブログ


脊髄は前正中裂と後正中裂によって左右に分かれており、左右はされに前外側溝、後外側溝により白質は前索側索後索の3索に分かれています。


脊髄後索はさらに内側部分が薄束、その外側が楔状束に分かれます。


脊髄後索路は上行性(感覚生)伝導路であり、深部感覚や触覚の一部を延髄に伝える伝導路です。

薄束が下肢からの情報を運ぶ神経線維の集まり、楔状束が上肢からの情報を運ぶ神経線維の集まりになります。

そのため楔状束は、下部の脊髄には見られず、およそ第6胸髄の高さから始まります。

>>脊髄の解剖と働きの解説はこちらから



延髄を交叉する。 ○

運動野からの神経繊維は大脳白質の放線冠という神経繊維が集まった束を通り、内包後脚に収束され、中脳の大脳脚から橋底部を経て延髄の錐体まで下行します。

ここで皮質脊髄路の約80〜90%が交叉して反対側に移ります。この交叉部位を錐体交叉といいます。

交叉した繊維は外側皮質脊髄路となり脊髄の側索を下行しつつ、脊髄前角細胞に終わります。

大脳皮質から脊髄まで、脊髄の外側(側索)を通り下行するため外側皮質脊髄路といいます。

外側皮質脊髄路は反対側の四肢の運動を制御しています。

一方、非交叉性の残りの繊維は錐体を下行し前皮質脊髄路となり、脊髄の前索を胸髄まで下行しつつ脊髄前角細胞に終わりますが、一部は脊髄の白交連を交叉して反対側の脊髄前細胞に終わります。


大脳皮質から脊髄まで、脊髄の前側(前索)を通り下降するため前皮質脊髄路といいます

前皮質脊髄路は体幹筋の制御をしています。

皮質脊髄路


皮質核路以外の全身の骨格筋運動に関与する伝導路

外側皮質脊髄路
運動野→放線冠→内包後脚→大脳脚→橋底部→錐体交叉→脊髄前角細胞

前皮質脊髄路
運動野→放線冠→内包後脚→大脳脚→橋底部→錐体を下行→脊髄前角細胞



眼球運動、咀嚼運動、表情運動、嚥下運動に関与する伝導路


皮質核路
運動野→放線冠→内包後脚→大脳脚→脳神経核


ゴロ『前回放送された内容、後半は脚本すいませんでした』
前回(運動前野)放送(放線冠)された内容、後半(内包後脚)は脚本(大脳脚)すい(錐体交叉)ません(前皮質脊髄路は交叉せん)でした。





>>錐体路(外側皮質脊髄路・前皮質脊髄路・皮質核路)の解説はこちらから



運動前野からの投射繊維を含まない。 ×

「錐体路系」とは大脳皮質の運動野から、脳幹の運動核や延髄の錐体を経由して脊髄の前角細胞まで下行する伝導路をいいます。


起始ニューロンは一次運動野の第Ⅴ層(Bets巨大錐体細胞)ですが、運動前野や体性感覚野などからおこる繊維も一部含んでいます。


脊髄で前角細胞にシナプス結合する。 ○

皮質脊髄路(外側皮質脊髄路・前皮質脊髄路)は共に運動野から始まり脊髄前角細胞に終わります。


皮質核路(皮質延髄路)は錐体路に含まれていますが、脳神経核にシナプスを結合するため、脊髄までは下行しません。



上肢に対応する繊維は下肢に対応する繊維よりも外側にある。 ×

この設問を理解する上で、「一次運動野の位置」「皮質脊髄路の走行」について理解する必要があります。


一次運動野には体部位局在(ホムンクルス)があり、大脳縦裂側(内側)から下肢→体幹→上肢→顔面の順に運動領域が存在しています。


図のように人は顔や指を動かす領域が広くなっています。

ホムンクルス 運動野

出典:motor homunculus in Japanese language. 著者:mailto:ralf@ark.in-berlin.de パブリックドメイン
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Motor_homunculus-ja.png



この設問が、
「上肢に対応する体部位局在は下肢に対応する体部位局在より外側にある」
であれば正しい文章になります。


ですが、今回問われているのは繊維についてです。


では、皮質脊髄路の走行について理解していきましょう。


一次運動野から下行する神経繊維は、体部位局在ごとの繊維でまとまって、ひねりを加えながら回転するように下行していきます。


錐体路の走行の大体のイメージは以下の図のようになります。

錐体路 走行 冠状面

出典:The motor tract. 著者:Henry Vandyke Carter パブリックドメイン(一部改変)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gray764.png?uselang=ja
出典:Tratos da medula espinhal 著者:Rhcastilhos CC BY-SA 3.0 (一部改変)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Medulla_spinalis_-tracts-_Portuguese.svg



前額面上の走行だけでは、ひねりを加えながら回転するように下行する様がわかりにくいので、水平面での走行も確認してみましょう。



①皮質レベル

中心溝の前方にある中心前回(一次運動野)を同定します。

体部位局在は内側から下肢→体幹→上肢→顔面と並んでいますが、皮質レベルの画像では、顔面の支配領域は確認できません。

皮質レベル


②半卵円中心レベル

下肢、体幹、上肢の神経繊維は側脳室外側方向にまとまって下行していきます。

半卵円中心レベルで顔面の支配領域が確認できます。

半卵円中心レベル



③側脳室天井レベル

横並びだった神経繊維が側脳室外側に集まりひねりを加えながら回転していきます。

徐々に前方が顔面、後方が下肢を通ります。

側脳室天井レベル



④モンロー孔レベル

視床・レンズ核・尾状核の囲まれた「くの字」の内包がある位置になります。


皮質脊髄路は内包後脚の上1/2を通り、上から上肢→体幹→下肢に配置されています。
(内包膝部を顔面、内包後脚が上肢・体幹・下肢)


運動繊維が集積しており、この部位の損傷で運動麻痺が重症化しやすいと言われています。

この辺りから外側に下肢、内側に顔面の神経が通過するようになります。



⑤中脳レベル

中脳では大脳脚と呼ばれる部分の中1/3部分を通ります。

中脳はミッキーマウスの頭の形に似ており、大脳脚は耳の部分にあたります。

内包と同様に運動繊維が集まっており、中脳の大脳脚を通過します。



⑥橋レベル

橋では橋底部を通ります。

この辺りから小束に分断され下行するため、症状は限局的であり、予後も良好であることが多いと言われています。



⑦延髄レベル

延髄では前面に2つの峰があり、錐体と呼ばれる部分を通過します。

多くは反対側に交叉(錐体交叉)し、脊髄に至ります。



⑧脊髄レベル

大脳皮質から脊髄まで、脊髄の外側(側索)を通り下行するため外側皮質脊髄路と呼ばれています。

内側から上肢→体幹→下肢の順に並んでいます。

脊髄 横断面

出典:Tratos da medula espinhal 著者:Rhcastilhos CC BY-SA 3.0 (一部改変)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Medulla_spinalis_-tracts-_Portuguese.svg
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