頭部MRIにおける脳解剖 (正中矢状断・冠状断・水平断)

頭部MRIにおける脳解剖

頭部MRI正中矢状断像でみられないのはどれか。

  1. 脳梁
  2. 下垂体
  3. 松果体
  4. 第四脳室
  5. 小脳歯状核







解答

目次

解説

この問題をとく上では、矢状面前額面正中面がどのような切り方をした断面なのか、そして脳部位の位置関係を理解していなければいけません。

脳は三次元の立体構造をしているので、MRI画像ではどの方向からの断面か、またどの部分なのかによって見える構造が異なります。

どの断面で出題されても正答できるように三次元的に理解しておきましょう。


  1. 矢状面:身体を左右に分ける面
    矢状面の中で身体の正中で分ける面は「正中矢状面」と呼ぶ。
  2. 前額面:身体を前後に分ける面
    別名で前頭面や冠状面と呼ばれることもある。
  3. 水平面:身体を上下で分ける面
    別名で横断面と呼ばれることもある。


横断面

出典:Human anatomy planes.svg 著者:YassineMrabet (CC BY-SA 3.0)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Human_anatomy_planes-JA.svg



「正中矢状面」は身体を正中で分けた断面なので、正中線上にある臓器しかMRIには写りません。

それでは、それぞれの臓器の位置関係を照らし合わせてみましょう。

1. 脳梁

脳梁は大脳の正中にあり、左右の大脳半球皮質を連結する交連繊維の束です。

左右の脳を結合しているわけですから正中に存在しています。

同じく交連繊維である脳弓も正中矢状面で確認することができます。


2. 下垂体

下垂体は視床下部の下方に突出しており視床下部漏斗によって連結されています。

腺性下垂体(前葉・中間部)と神経性下垂体(後葉)からなり、後者は視床下部からの神経情報をもとに後葉ホルモン(バソプレシン・オキシトシン)が放出されています。

下垂体は正中矢状面に対して対照的な構造をしています。


3. 松果体

松果体は間脳の後方に突出しており視床の後方、第三脳室の後壁に隣接して存在しています。

メラトニンやセロトニンを生成し睡眠や概日リズム(体内時計)および、性成熟(性腺刺激ホルモン)の放出を抑制しています。

目からの情報をもとに、松果体が日内リズムの調整を行っているため「第三の眼」と呼ばれています。

松果体も正中矢状面に対して対照的な構造をしています。

出典:間脳のおはなし Akira Magazine
https://www.akira3132.info/diencephalon.html



4. 第四脳室

中枢神経の内部に広がる4つの空間を脳室といいます。

脳室内部には脳脊髄液’(髄液)で満たされており、全身で約150ml存在しています。

この髄液は脈絡叢から一日約500ml産生されています。

なので一日に約3~4回髄液が入れ替わっているということになります。


髄液の流れ
STEP
側脳室

左右の大脳半球に存在しており一対になっています。
側脳室の脈絡叢から産生された髄液が、室間孔(モンロー孔)を通り第三脳室に入ります。

STEP
第三脳室

間脳の正中部に存在しており、第三脳室の脈絡叢から産生された髄液と合わさり中脳水道に入ります。

STEP
中脳水道

名前の通り中脳の正中深部を貫くように存在しています。
脈絡叢はみられず髄液は次いで第四脳室に入ります。

STEP
第四脳室

橋・延髄の背側、小脳の腹側にあり、第四脳室の脈絡叢から産生された髄液と合わさり下方の中心菅に次ぎます。
また第四脳室の正中口(マジャンディー孔)、前外側には左右の外側口(ルシュカ孔)と呼ばれる3ヶ所の出口があり、くも膜下腔に入ります。

STEP
くも膜下腔

くも膜下腔に入った髄液は硬膜静脈洞(上矢状静脈洞)のくも膜下粒から吸収され静脈系に入ります。


この経路のいずれかが詰まる事により水頭症を生じます。




脳室系の中では第三脳室、中脳水道、第四脳室は正中に存在しており、正中矢状面に対して対照的な構造をしています。


側脳室も左右一対になっていますが、正中には存在しないのでMRIの正中矢状面では確認できません。


5. 小脳歯状核

小脳は橋と延髄の背側にあり第四脳室の天井をつくりながら大きく左右に膨らんでおり、脳幹と三対の小脳脚上小脳脚中小脳脚下小脳脚)で結合しています。

正中部の細長い虫部と左右の大きく隆起した半球からなります。

小脳皮質は表面(灰白質)は表層から深層に向かって、分子層神経細胞層(プルキンエ細胞)顆粒層に区分されています。

深部(白質)には4つの小脳核が存在し、それぞれ室頂核球状核栓状核歯状核があります。

これらはすべて出力核であり随意運動の調整と体の平衡の保持・姿勢の調整を行っています。


小脳核

楽楽痛み研究会より引用

小脳の断面図を見ると判りやすいですが、小脳核はすべて正中にはありません。

なので、MRI画像の正中矢状面では「小脳歯状核」は写らないという事になります。

小脳虫部は正中にあるので確認できますね。

>>小脳の構造と機能の解説はこちらから




類似問題

52A77 頭部MRIのT1強調冠状断像の矢印の部分はどれか。

52ptam77
  1. 前頭弁蓋
  2. 帯状回
  3. 尾状核
  4. 海馬
解答と解説

解答

MRIには様々な撮影方法があり、その1つにT1強調画像があります。
解剖学的構造が捉えやすく、脳萎縮などの形態異常を発見しやすいのが特徴で、脳脊髄液は黒色、脳実質は灰色で描写されます。
その反面、脳梗塞巣が目立たないという欠点があります。

冠状断像は頭部を前後に分けたときの断面になります。
脳はどの方向からの断面かによって、描出される部位が大きく異なります。

例えば、
水平面:中心溝であれば水平面の上部の断面で同定しやすい
冠状面:海馬、扁桃体、辺縁系が描写しやすい
矢状面:帯状回、脳梁、脳幹の全体像が描写しやすい


イメージがつきにくいと思うので、頭部MRI 冠状断(T1/T2)を各スライスごとに部位を確認しながら解いてみてください。

>>頭部MRI 冠状断面を各スライスごとに確認↓



1.×
前頭葉は中心前回上前頭回中前頭回下前頭回の4つに分けられます。
さらに下前頭回は眼窩部三角部弁蓋部の3つの領域からなります。
弁蓋という名前は鳥皮質を蓋で覆うように存在しているためであり、ブローカー野(運動性言語中枢)は下前頭回の三角部弁蓋部に存在しています。

弁蓋部
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Opercular_part_of_the_IFG_animation_small.gif


下前頭回弁蓋部は中心前溝の下部と外側溝の上部にかけて存在しているため、問題のような冠状断像では外側部に存在しているはずですね。


2.×
前頭葉から頭頂葉にかけて脳梁と平行に走る帯状溝があり、脳梁と帯状溝に囲まれた部位を帯状回といいます。

大脳辺縁系の各部位を連絡して情動や記憶の中枢として働いています。

下図のように冠状断像では中央部にあたりますね。

帯状回 冠状面
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gray743_cingulate_gyrus.png
帯状回 3D図
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cingulate_gyrus_animation_small.gif


3.×
尾状核は大脳基底核の一つであり、錐体外路系の中継点として、目的や状況にあった運動を促進、不必要な運動を抑制しています。

脳の中心で視床の両側に存在しており、側脳室の一部を形成しています。
形がアルファベッドのCの形をしているのも特徴的です。

出典:大脳基底核のイラスト (看護roo!イラスト集)
https://www.kango-roo.com/ki/image_686/




4.○
海馬は脳の外表面には見えず、側頭葉の内側部に隆起しておりタツノオトシゴのような形をしています。

様々な記憶に関与していますが、特に短期記憶に密接に関連していると言われています。

冠状断では側脳室体部の拡大や、海馬・大脳皮質の萎縮が顕著に観察できることから、アルツハイマー型認知症の補助診断として撮影されています。

本門の断面図位置はやや前方であり、海馬の確認しずらい点もあり難しいですね。

海馬 3D
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hippocampus_small.gif


5.×
鳥皮質は5つ目の脳葉として鳥葉や、脳回の一つとして鳥回、またはと呼ばれます。
鳥は前頭葉(前頭弁蓋)、側頭葉(側頭弁蓋)、頭頂葉(前頭頭頂弁蓋)の一部である弁蓋と呼ばれる領域に覆われており、脳の外表面からは見えません。

下図のように外側溝の奥に存在しており、冠状断像では外側に位置しています。

鳥皮質 冠状断
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gray717-emphasizing-insula.png


50A53 頭部MRIのT2強調画像で海馬はどれか。

50ptam53
解答と解説

解答

MRIには様々な撮影方法があり、その1つにT2強調画像があります。
脳脊髄液と脳梗塞が白色に写り、梗塞巣や腫瘍が把握しやすい特徴がある反面、解剖学的構造の把握が難しいという欠点があります。
脳脊髄液は白色、脳実質は黒色で描写されT1強調画像と反転してような画像になります。

冠状断像は頭部を前後に分けたときの断面になります。
脳はどの方向からの断面かによって、描出される部位が大きく異なります。

例えば、
水平面:中心溝であれば水平面の上部の断面で同定しやすい
冠状面:海馬、扁桃体、辺縁系が描写しやすい
矢状面:帯状回、脳梁、脳幹の全体像が描写しやすい


イメージがつきにくいと思うので、頭部MRI 冠状断(T1/T2)を各スライスごとに部位を確認しながら解いてみてください。

>>頭部MRI 冠状断面を各スライスごとに確認↓

1.×
①は、側脳室です。
脳の内部に広がる4つの空間を脳室といい、側脳室は大脳半球に存在しており一対になっています。

側脳室 3D
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Lateral_ventricle_small.gif


2.×
②は、視床です。
間脳の一部であり、視覚・聴覚・体性感覚などの伝導路を中継する部位になります。

視床 3D
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Thalamus_small.gif


3.○
③は、海馬です。
海馬は脳の外表面には見えず、側頭葉の内側部に隆起しておりタツノオトシゴのような形をしています。

様々な記憶に関与していますが、特に短期記憶に密接に関連していると言われています。

冠状断では側脳室体部の拡大や、海馬・大脳皮質の萎縮が顕著に観察できることから、アルツハイマー型認知症の補助診断として撮影されています。

海馬 3D

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hippocampus_small.gif


4.×
④は、です。
橋は脳幹の1つであり、中脳と延髄に挟まれています。

橋 3D
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pons_small.gif


5.×
⑤は、側頭葉です。
側頭葉は脳の外側の、外側溝(シルビウス溝)の下部に存在しています。

側頭葉 3D
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Temporal_lobe_animation.gif

43-20 頭部MRIで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 第3脳室
  2. 尾状核
  3. 松果体
  4. 視床
  5. 第4脳室
解答と解説

解答24

CT・MRIの横断像がどの高さでスライスした画像なのかは、側脳室の形を見るのがポイントになります。
側脳室は他の脳部位と違い、横断像で特徴的な見え方をするためです。

問題の画像であれば、側脳室の前角・後角の高さであるため、脳幹レベルのスライドで所見できる項目は選択肢から除外できますね。


1.×
第3脳室ではなく、側脳室を示しています。
第3脳室は間脳(視床上部・視床・視床下部)の正中部に位置しています。
この画像では、5の位置が第3脳室です。

2.○
尾状核を示しています。
側脳室の外側に位置しており、尾状核と被殻を合わせて線条体といいます。

3.×
松果体ではなく、脳弓を示しています。
脳弓は海馬と視床下部の乳頭体を結ぶ投射繊維であり、情動記憶として回路(パペッツ回路)が知られています。

松果体は間脳の後方に突出しており視床の後方、第三脳室の後壁に隣接して存在しています。
メラトニンやセロトニンを生成し睡眠や概日リズム(体内時計)および、性成熟(性腺刺激ホルモン)の放出を抑制しています。

4.○
視床を示しています。
視床は内包後脚の後内側に位置しており、視覚・聴覚・体性感覚などの中継核になります。

5.×
第4脳室ではなく、第3脳室を示しています。
第4脳室は橋・延髄の背側に位置しているため、脳幹レベルのスライドで所見できます。

参考文献

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