過去の出題傾向
押さえておきたいPoint!!
- 門脈を形成する静脈(主静脈とその他)
- 門脈の役割
門脈系とは
門脈とは肝門脈とも呼ばれ、胃・腸・膵臓・脾臓から集められた静脈血が、肝臓(肝門部)に入っていく静脈のことをいいます。
通常の体循環では、心臓から送り出された動脈は毛細血管を通過して静脈となり心臓に灌流されます。
しかし、門脈系は毛細血管を二回通過する特殊な形態をもっています。
具体的に説明すると、心臓から出た動脈は各消化管の毛細血管を通過して静脈になります。
この静脈は消化管で吸収された栄養を多く含んでおり、肝臓内の毛細血管で吸収されたのち、静脈になり心臓に灌流されます。
流れは、心臓→動脈→消化管の毛細血管→静脈→肝臓の毛細血管→静脈→心臓です。
毛細血管と毛細血管の間にある、肝臓に向かう静脈系が門脈と呼ばれています。
つまり門脈系は、胃や腸などの消化菅の静脈血が肝臓で再び毛細血管を通過することで、吸収された栄養分や膵臓から分泌されたホルモン、脾臓で破壊された赤血球のヘモグロビンを効率よく肝臓に運ぶ役割をもっています。
門脈系は2回、毛細血管を通過するんだね!
- 一般の体循環
-
動脈⇨毛細血管⇨静脈
- 門脈系
-
動脈⇨毛細血管⇨門脈⇨毛細血管⇨静脈
門脈に入る静脈
胃、腸、膵臓、脾臓などの消化器官から集められた静脈血は門脈になり、肝臓に入っていきますが、門脈はどんな静脈が集まったものなんでしょうか?
門脈を形成する静脈は大小さまざまで個人差により合流しない血管もあります。
一般的には、上腸間膜静脈と脾静脈が合流し門脈本幹となり、途中に下腸間膜静脈も合流します。
個人差があり、胃静脈と嚢胞静脈も合流するといわれていますが、胃静脈については過去の国家試験で問われたことがあるため覚えていたほうが良いでしょう。
腎臓などの泌尿器系と下肢からの静脈が門脈に入らないのもポイントです。
肝臓は他の臓器と比べて特殊な血管系を有しており、機能血管である門脈と栄養血管である肝動脈の2つの血管が入ります。
肝臓に入った門脈からの血液と、肝動脈からの血液が混ざったものが肝静脈から出て下大静脈に入ります。
出典:循環器系の仕組みと働き http://plaza.umin.ac.jp/~histsite/4circletxt.pdf
- 三大主静脈
-
- 脾静脈
- 上腸間膜静脈
- 下腸間膜静脈
- その他
-
- 胃静脈
- 嚢胞静脈
門脈は消化管の大部分から血液を受け肝臓に向かう機能血管です。
消化・吸収されたものはまず肝臓で処理され、食道下部から上部直腸までの消化管からでた静脈血は最終的に門脈に至ります。
消化管の癌はこの経路で肝癌に転移する可能性があります。
ただし、中部および下部直腸にできた癌は、内腸骨静脈から直接、下大静脈に流れ込むため、その先の肺に転移することがあります。
門脈を流れる血液のほとんどが肝臓に入りますが、一部の静脈は肝臓に入らず迂回して他の静脈系に入ります。
これは側副血行路として機能しており、なんらかの疾患により肝臓に血液が送れなくなっても、迂回して心臓に血液を戻すことが出来きます。
肝硬変などで門脈の血圧が上昇すると、迂回路に大量の血液が流れ込み静脈瘤が発生します。
代表的なもので、食道静脈瘤や臍の周辺の皮静脈が放射状に怒張し「メデューサの頭」といわれる状態になります。
門脈に入る静脈と、下大静脈に入る静脈の違いは、国家試験でもよく問われる内容なのでしっかり押さえておきましょう。
>>下大静脈に入る静脈の解説と類似問題はこちらから↓
類似問題
46P56 門脈に流入しないのはどれか。
- 脾静脈
- 左胃静脈
- 左腎静脈
- 空回腸静脈
- 上腸間膜静脈
解答と解説
解答3
門脈は各消化管から得られた栄養を肝臓へと運ぶ働きを持つ血管で、胃・腸・膵臓・脾臓・胆嚢の毛細管から静脈血を集めます。
1.○
脾静脈は上腸間膜静脈と下腸間膜静脈と合流し門脈に至ります。
2.○
胃静脈は、左胃静脈・右胃静脈・幽門前静脈を総称して胃冠状静脈と呼ばれていますが、左胃静脈=胃冠状静脈が同義語として使用されます。
左胃静脈は門脈に流入する血管になります。
また、左胃静脈(門脈系)と食道静脈(奇静脈系)は吻合しており、門脈の側副血行路として働き、奇静脈から上大静脈に灌流します。
3.×
左腎静脈は下大静脈に流入します。
腎臓などの泌尿器系と下肢からの静脈は門脈に入りません。
4.○
上腸間膜静脈は小腸、上行結腸、横行結腸からの静脈血が流入します。
空回腸静脈(小腸)は上腸間膜静脈に注ぎ、その後門脈になります。
空回腸静脈は上腸間膜静脈に流入するものであって、直接門脈に流入するわけではありません。
「その血液が門脈に流入しないのは」という設問であれば、引っかかりがないですが、消去法で考えましょう。
5.○
上腸間膜静脈は下腸間膜静脈と脾静脈と合流して門脈を形成します。
44P16 消化管、塍臓および脾臓からの血液を肝臓内に導く血管はどれか。
- 門脈
- 肝静脈
- 下大静脈
- 固有肝動脈
- 上腸間膜動脈
解答と解説
解答1
1.○
門脈は消化管、膵臓、胆嚢、脾臓からの静脈を集め、肝臓に流入します。
2.×
門脈は肝門から肝臓に入りますが、肝臓から出る肝静脈は肝門からではなく、肝臓の後面から下大静脈に入ります。
3.×
下大静脈は下半身の血液を集め、心臓に流入する血管で、肝臓には流入しません。
4.×
腹部大動脈→腹腔動脈→総肝動脈→固有肝動脈と分岐して肝臓に入ります。
腹腔動脈は①左胃動脈②脾動脈③総肝動脈を分岐します。
総肝動脈は①固有肝動脈②右胃動脈③胃十二指腸動脈を分岐します。
5.×
上腸間膜動脈は腹部大動脈から分岐し、小腸、上行結腸、横行結腸からの静脈血を集めて門脈に入ります。肝臓に分布するのは、上腸間膜動脈ではなく門脈ですね。
41P14 門脈に関係する静脈で誤っているのはどれか。2つ選べ。
- 上腸間膜静脈
- 左胃静脈
- 脾静脈
- 腎静脈
- 総腸骨静脈
解答と解説
解答45
1.○
上腸間膜動脈は腹部大動脈から分岐し、小腸、上行結腸、横行結腸からの静脈血を集めて門脈に入ります。
2.○
胃静脈は、左胃静脈・右胃静脈・幽門前静脈を総称して胃冠状静脈と呼ばれていますが、左胃静脈=胃冠状静脈が同義語として使用されます。
左胃静脈は門脈に流入する血管になります。
また、左胃静脈(門脈系)と食道静脈(奇静脈系)は吻合しており、門脈の側副血行路として働き、奇静脈から上大静脈に灌流します。
3.○
脾静脈と上腸間膜静脈と下腸間膜上膜は門脈を形成します。
4.×
腎静脈は下大静脈に入ります。
腎臓などの泌尿器系と下肢からの静脈が門脈に入らないのもポイントです。
5.×
第5腰椎レベルで左右の総腸骨静脈が合流して、下大静脈になります。
◆ 下大静脈に注ぐ静脈の枝
- 下横隔静脈
- 肝静脈
- 腎静脈
- 精巣・卵巣静脈
- 腰静脈
37P11 門脈に流入しないのはどれか。
- 左腎静脈
- 脾静脈
- 上腸管膜静脈
- 左胃静脈
- 空回腸静脈
解答と解説
解答1
1.×
腎門から出てきた腎静脈は、左右とも下大静脈に入ります。
下大静脈は正中より右側にあるので、左腎静脈は腹大動脈を乗り越えて右側の下大静脈にに入るため左側が長くなっています。
また、右副腎静脈と右精巣静脈は直接、下大静脈に入りますが、左副腎静脈と左精巣静脈は左腎静脈に入ります。
23.○
脾静脈と上腸間膜静脈と下腸間膜静脈は門脈を形成します。
4.○
胃静脈は、左胃静脈・右胃静脈・幽門前静脈を総称して胃冠状静脈と呼ばれていますが、左胃静脈=胃冠状静脈が同義語として使用されます。
左胃静脈は門脈に流入する血管になります。
また、左胃静脈(門脈系)と食道静脈(奇静脈系)は吻合しており、門脈の側副血行路として働き、奇静脈から上大静脈に灌流します。
5.○
上腸間膜静脈は小腸、上行結腸、横行結腸からの静脈血が流入します。
空回腸静脈(小腸)は上腸間膜静脈に注ぎ、その後門脈になります。
空回腸静脈は上腸間膜静脈に流入するものであって、直接門脈に流入するわけではありません。
「その血液が門脈に流入しないのは」という設問であれば、引っかかりがないですが、消去法で考えましょう。
33P14 門脈に注ぐ器官で誤っているのはどれか。
- 脾臓
- 胃
- 膵臓
- 腎臓
- 結腸
解答と解説
解答4
門脈は各消化管から得られた栄養を肝臓へと運ぶ働きを持つ血管で、胃・腸・膵臓・脾臓・胆嚢の毛細管から静脈血を集めます。
1.○
2.○
3.○
4.× 腎臓などの泌尿器系と下肢からの静脈が門脈に入りません。
5.○
- 『解剖学 第5版(標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野) 』(出版社:医学書院)
- 『休み時間の解剖生理学』 (出版社:講談社)
- 『門脈圧亢進症をめぐって 日門亢会誌 2014:20:104-107』
- 『All about portal vein: a pictorial display to anatomy, variants and physiopathology.Carneiro et al. Insights into Imaging (2019) 10:38』
- 『門脈系のはたらき』
- 『肝臓』
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