過去の出題傾向
押さえておきたいPoint!!
- 上大静脈と下大静脈に枝を出す静脈
- 側副血行路として働く奇静脈の流れ
>>下行大動脈(胸大動脈・腹大動脈)から分岐する動脈の解説と類似問題はこちらから↓
体循環の静脈系の走行
体循環では左心室から出た血液は上行大動脈→大動脈弓→下行大動脈を経て、各臓器に酸素を供給します。
二酸化炭素などの老廃物を受け取った静脈は、上大静脈・下大静脈を経て右心房に入ります。
体循環は左心室→動脈→毛細血管→静脈→右心房までの一連の流れをいいます。
動脈の本幹である大動脈が左心室から一本なのに対して、静脈の本幹は上大静脈・下大静脈・冠状静脈洞の3本が別々に右心房に入ります。
静脈の多くは動脈と同じ走行をしており、からだの深層を併行して走っているため、深静脈と呼ばれます。
しかし、大静脈系・皮静脈系・硬膜静脈洞系・奇静脈系・門脈系の走行は動脈系と異なります。
上大静脈と下大静脈は奇静脈を介して連絡しており、大静脈系と奇静脈系は密接に関係しています。
ここでは、大静脈系と奇静脈系の2つについて解説します。
- 心臓(左心室)から出る動脈
-
- 大動脈
- 心臓(右心房)に入る静脈
-
- 上大静脈
- 下大静脈
- 冠状静脈洞
上大静脈の走行
上大静脈は頭頸部と上肢からの血液を集める本幹です。
上大静脈は、頭頸部からの内頸静脈と上肢からの鎖骨下静脈が合流した左右の腕頭静脈と奇静脈の流入によって出来ます。
左右の腕頭動脈は合流して上大静脈になった後、右の気管支と右肺動静脈の前を下行して右心房に入ります。
内頸静脈と鎖骨下静脈の合流部を静脈角といい、左右の静脈角に全身のリンパ液が注がれます。
腕頭静脈は左右にありますが、腕頭動脈は右側にしかないので注意が必要です。
◆ 腕頭静脈・内頸静脈・鎖骨下静脈に注ぐ細い静脈
- 椎骨静脈 → 腕頭静脈
- 顔面静脈、舌静脈、上甲状腺静脈 → 内頸静脈
- 外頸静脈 → 鎖骨下静脈
- 内胸静脈 → 腕頭静脈 or 上大静脈
余裕があれば覚えよう!!
下大静脈の走行
下大静脈は、横隔膜の下にある臓器から血液を集める本幹です。
第5腰椎レベルで左右の総腸骨静脈が合流して、下大静脈になります。
途中に、腰静脈や腎静脈などを受けながら、腹大動脈の右側を上行して横隔膜の大静脈孔を通って右心房に入ります。
胃、腸、膵臓、脾臓から集められた静脈血は下大静脈に入らず、門脈に注ぎます。
門脈は、上腸間膜静脈・下腸間膜静脈・脾静脈から形成され、肝門から肝臓に入ります。
消化管で吸収された栄養分や、膵臓から分泌されたインスリンやグルカゴン、ヘモグロビンを肝臓に運び、3本の肝静脈として下大静脈に注ぎます。
下大動脈である胸大動脈と腹大動脈から沢山の枝が分岐しているのに比較して、静脈の枝がスッキリしているのは、門脈によってまとまっているためです。
>>門脈の詳しい解説と類似問題はこちらから
- 下横隔静脈
- 肝静脈
- 腎静脈
- 精巣・卵巣静脈
- 腰静脈
◆左右の副腎静脈・精巣静脈の特徴◆
下大静脈は正中より右側にあるので、左腎静脈は腹大動脈を乗り越えて右側の下大静脈にに入るため左側が長くなっています。
また、右副腎静脈と右精巣静脈は直接、下大静脈に入りますが、左副腎静脈と左精巣静脈は左腎静脈に入ります。
奇静脈
奇静脈とは上大静脈と下大静脈を繋いでおり、側副血行路として働きます。
特に下大静脈が閉塞した場合、奇静脈が血液を心臓に還る側副路として働きます。
奇静脈系は奇静脈・半奇静脈・副半奇静脈の3つからなります。
画像診断まとめ https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/
- 奇静脈(右側)
-
右上行腰静脈から上行して、右肋間静脈を縦に連結して上大静脈に繋がります。
- 半奇静脈(左下側)
-
左上行腰静脈から上行して、左肋間静脈を縦に連結して、第8胸椎レベルで奇静脈に繋がります。
- 副半奇静脈(左上側)
-
第4肋間の高さから下行して、左肋間静脈を縦に連結して、奇静脈または半奇静脈と繋がります。
類似問題
56A57 上大静脈と下大静脈とを結ぶ静脈はどれか。
1. 奇静脈
2. 鎖骨下静脈
3. 上腸管膜静脈
4. 腎静脈
5. 脾静脈
解答と解説
解答1
1.○
脊柱の右側を上行し上大静脈に合流する静脈を奇静脈と言います。
その他にも、脊柱の左下側を走行する半奇静脈と左上側を副半奇静脈があります。
これらは上大静脈と下大静脈の連絡を担って、閉塞した際には奇静脈が側副血行路として機能します。
2.×
鎖骨下静脈と内頸静脈は合流して腕頭静脈になります。左右の腕頭動脈は合流して上大静脈になり、心臓の右心房に入ります。
3.×
上腸間膜静脈・下腸間膜静脈・脾静脈は門脈を形成して肝臓に入ります。
消化管で吸収された栄養分や、膵臓から分泌されたインスリンやグルカゴン、ヘモグロビンを肝臓に運び、3本の肝静脈として下大静脈に注ぎます。
4.×
胃、腸、膵臓、脾臓からの静脈血は門脈に入りますが、腰静脈と腎静脈は直接、下大静脈に注ぎます。
5.×
上腸間膜静脈・下腸間膜静脈・脾静脈は門脈を形成します。
55A56 下大静脈に直接入るのはどれか。2つ選べ。
1. 肝静脈
2. 胃静脈
3. 脾静脈
4. 空回腸静脈
5. 腎静脈
解答と解説
解答15
1.○
門脈は肝門から肝臓に入りますが、肝臓から出る肝静脈は肝門からではなく、肝臓の後面から下大静脈に入ります。
2.×
胃静脈は門脈本幹に直接入ります。(下図参照)
胃静脈は、左胃静脈・右胃静脈・幽門前静脈を総称して胃冠状静脈と呼ばれていますが、左胃静脈=胃冠状静脈が同義語として使用されます。
胃静脈は門脈の側副路であり、食道静脈と吻合しているため門脈圧亢進症で食道静脈瘤が生じやすくなります。
3.×
上腸間膜静脈・下腸間膜静脈・脾静脈は門脈を形成して、肝門から肝臓に入ります。
4.×
上腸間膜静脈に小腸、上行結腸、横行結腸からの静脈血が流入します。
空回腸静脈(小腸)は上腸間膜静脈に注ぎます。
上腸間膜静脈:小腸、上行結腸、横行結腸
下腸間膜静脈:下行結腸、S状結腸、直腸上部
脾静脈:脾臓
5.○ 腎静脈は下大静脈に入ります。
◆ 下大静脈に注ぐ静脈の枝
- 下横隔静脈
- 肝静脈
- 腎静脈
- 精巣・卵巣静脈
- 腰静脈
出典:循環器系の仕組みと働き http://plaza.umin.ac.jp/~histsite/4circletxt.pdf
51A57 上大静脈と下大静脈とを結ぶ静脈はどれか。
1. 奇静脈
2. 腎静脈
3. 脾静脈
4. 鎖骨下静脈
5. 上腸管膜静脈
解答と解説
解答1
1.○
脊柱の右側を上行し上大静脈に合流する静脈を奇静脈と言います。
その他にも、脊柱の左下側を走行する半奇静脈と左上側を副半奇静脈があります。
これらは上大静脈と下大静脈の連絡を担って、閉塞した際には奇静脈が側副血行路として機能します。
2.×
胃、腸、膵臓、脾臓からの静脈血は門脈に入りますが、腰静脈と腎静脈は直接、下大静脈に注ぎます。
3.×
脾静脈は上腸間膜静脈と下腸間膜静脈と合流して門脈を形成して、肝門から肝臓に入ります。
4.×
鎖骨下静脈は内頸静脈と合流して腕頭静脈になります。
5.×
上腸間膜静脈は下腸間膜静脈と脾静脈と合流して門脈を形成して、肝門から肝臓に入ります。
43P14 正しいのはどれか。2つ選べ。
- 腎静脈には動脈血が流れる。
- 総腸骨静脈は下大静脈へ流入する。
- 冠状静脈洞は左心房へ注ぐ。
- 奇静脈は門脈へ注ぐ。
- 脳底静脈叢は脊柱管の静脈叢と連絡をもつ。
解答と解説
解答25
1.×
腎静脈には動脈血が流れます。
ちなみに、肺動脈には静脈血が、肺静脈には動脈血が流れるので注意です。
・動脈=心臓から出る動脈
・静脈=心臓に戻る動脈
・動脈血=酸素を多く含む血液
・静脈血=二酸化炭素を多く含む血液
全身の二酸化炭素を含んだ静脈血は心臓に戻った後、肺動脈(静脈血)になります。
肺で新鮮な酸素とガス交換を行って肺静脈(動脈血)になって全身に運ばれます。
2.○
左右の総腸骨静脈が合流して下大静脈になります。
3.×
右心房に入る静脈は上大静脈・下大静脈・冠状静脈洞の3つになります。
・上大静脈:頭頸部と上肢から血液を集める
・下大静脈:横隔膜以下の臓器と下肢から血液を集める
・冠状静脈洞:心臓からの静脈血を集める静脈の本幹
4.×
奇静脈は半奇静脈と副半奇静脈と合流した後に上大静脈に注ぎます。
上大静脈と下大静脈を繋いでおり、側副血行路として働きます。
門脈には、胃・腸・膵臓・脾臓から集められた静脈血が注がれます。
上腸間膜静脈・下腸間膜静脈・脾静脈から形成されて、肝門から肝臓に入ります。
5.○
後頭蓋窩には斜台と呼ばれる、橋と延髄を乗せる滑り台のような傾斜が存在します。
この斜台の上に脳底静脈叢は存在しており、さまざまな静脈と連絡をとっています。
脳の静脈血の多くは硬膜静脈洞に集められて、頸静脈孔から内頸静脈として頭蓋外に出ますが、それ以外にもさまざまな経路があり、そのひとつに脳底静脈叢から脊柱管静脈叢へと流れる経路があります。
脊柱管静脈叢は脊柱管内を上下に走行し、椎骨静脈や上肋間静脈とも交通しています。
他にも、
・海綿静脈洞から上眼静脈へ流れて顔面静脈に流れる経路
・海綿静脈洞から卵円孔静脈叢、棘孔を介して翼突筋静脈叢に至り顎静脈に流れる経路
などがあります。
42P15 上大静脈に直接入るのはどれか。
- 椎骨静脈
- 内胸静脈
- 外頸静脈
- 奇静脈
- 内頸静脈
解答と解説
解答4
1.×
椎骨静脈は腕頭静脈に注ぎます。
2.×
内胸静脈は腕頭静脈に注ぎます。一部、上大静脈に直接入る枝をあるようです。
3.×
外頸静脈は鎖骨下静脈に注ぎます。
4.○
脊柱の右側を上行し上大静脈に合流する静脈を奇静脈と言います。
その他にも、脊柱の左下側を走行する半奇静脈と左上側を副半奇静脈があります。
これらは上大静脈と下大静脈の連絡を担って、閉塞した際には奇静脈が側副血行路として機能します。
5.×
内頸静脈と鎖骨下静脈が合流して腕頭静脈になります。
39P13 下大静脈に直接入る静脈で誤っているのはどれか.
- 奇静脈
- 肝静脈
- 腰静脈
- 腎静脈
- 総腸骨静脈
解答と解説
解答1
1.×
奇静脈は右上行腰静脈から始まり、上大静脈に入ります。
上大静脈と下大静脈の側副血行路として働きますが、直接下大静脈と繋がっていません。
2.○
肝静脈は下大静脈に注ぎます。
3.○
腰静脈は下大静脈に注ぎます。
4.○
腎静脈は下大静脈に注ぎます。
5.○
左右の総腸骨静脈が合流して下大静脈になります。
◆ 下大静脈に注ぐ静脈の枝
- 下横隔静脈
- 肝静脈
- 腎静脈
- 精巣・卵巣静脈
- 腰静脈
- 『解剖学 第5版(標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野) 』(出版社:医学書院)
- 『からだの動きの解剖生理学』 (出版社:金芳堂)
- 『休み時間の解剖生理学』 (出版社:講談社)
- 『胃静脈の流入変異について:解剖,第10回臨床解剖研究会記録 2006』
- 『左右椎骨静脈間交通路について,第4回臨床解剖研究会記録 2000』
- 『頭蓋内外を結ぶ静脈経路,第15回臨床解剖研究会記録 2011』
- 『門脈系のはたらき』
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