皮膚に存在する感覚受容器の構造と機能(機械受容器・温度受容器・侵害受容器)

感覚受容器
目次

過去の出題傾向

押さえておきたいPoint!!

  • 自由神経終末の役割
  • 主要な機械受容器
    (メルケル細胞、マイスネル小体、パチニ小体、ルフィニ終末)
  • 温覚・冷覚の受容器
  • 深部感覚の受容器



感覚受容器は沢山ありますが、

「温痛覚は自由神経終末」それ以外は触圧覚

という、大まかな覚え方でも選択肢はある程度消せます。


深部感覚の受容器が選択肢に入っていたり、受容器の存在する場所の知識が必要な問題もあるため余裕があれば覚えましょう。



感覚受容器

皮膚には触覚、圧覚、痛覚、温覚、冷覚などの皮膚感覚を感じるための感覚受容器が分布しています。

感覚受容器は大きく分けて機械受容器温度受容器侵害受容器があります。

触圧覚に関係する受容器は、変形や圧変化などの機械的な刺激によって興奮するため、機械受容器と呼ばれます。

私たちの身体が皮膚感覚を得ることができるのは、機械受容器とよばれる生体触覚センサーが皮膚の中の異なる層に分布しており、触覚センサーシステムを構成しているためです。

感覚受容器
機械受容器

動きや力を感じ、触覚や圧覚を受け持ちます。

温度受容器

温覚、冷覚などの温度を感じます。

侵害受容器

痛覚を受け持ちます。


機械的受容器

皮膚は表面から表皮真皮皮下組織の三層から構成されています。

>>皮膚の構造と機能の解説はこちらから



指腹部や手のひらなどの無毛部には機械受容器であるメルケル細胞マイスネル小体パチニ小体ルフィ二終末が皮膚の異なる層に存在しています。


有毛部には毛包受容器、真皮や口腔にはクラウゼ小体(クラウゼ終棍)があります。


これらはずべて触圧覚を感じる機械受容器ですが、持続的な刺激に慣れる(順応)性質をもっており、感じることができる範囲(受容野)もそれぞれ違います。


機械受容器は順応の速さと受容野の大きさによって4つに分類されています。

遅順応型(SA)応答が刺激の間は持続するタイプ
早順応型(RA)刺激の初めと終わりにのみ応答するタイプ
Ⅰ型は受容野が小さく、境界が比較的鮮明
Ⅱ型は受容野が広く、境界が不明瞭

SAⅠ:メルケル細胞
SAⅡ:ルフィニ終末
RAⅠ:マイスネル小体
RAⅡ:パチニ小体



出典:主要な機械受容器 著書:Biology 2e CC 表示
https://openstax.org/details/books/biology-2e



メルケル細胞(メルケル盤)

メルケル細胞は表皮と真皮の境界に位置しており、機械受容器の中で最も皮膚表面に存在しています。


メルケル細胞は狭義のメルケル細胞神経終末であるメルケル盤からなり、両者が一体となっているので国家試験では同義として捉えて問題ないと思われます。


有毛皮膚と無毛皮膚(手掌・指・足裏・唇etc.)の両方の皮膚上層に存在しており、特に指先や唇などに多く存在します。

メルケル細胞は、受容野が狭く、境界がはっきりしています。

そのため、小さい物や角がある物に対して感覚が敏感で、パソコンをタイピングするような細かい作業や、優しく触れただけで反応します。


刺激の位置を正確に特定する軽い圧力・識別性触覚に特に応答します。

SAⅠ型。受容野は狭い。順応は遅い。皮膚の変形を感受します。



マイスネル小体(マイスナー小体)

マイスネル小体は表皮と真皮の境界である真皮乳頭に存在しています。


正確にはマイスナー小体は真皮上層に存在しますが、真皮乳頭としてそれらは表皮に突き出しています。


指先や唇などの無毛皮膚に見られ、触覚や圧力にも反応しますが、低周波振動にも反応します。

SAⅠ型。受容野は狭い。順応は遅い。皮膚の変形を感受します。




ルフィニ小体(ルフィニ終末)

ルフィニ小体は真皮に存在しており、コラーゲン組織と複雑に絡み合うような球状小体の構造をしています。


有毛皮膚と無毛皮膚の両方の皮膚深層に位置しているため、空間的分解能(感覚の解像度)は高くありません。

皮膚の引っ張る方向や大きさの検出や、皮膚と深部組織との間の緊張の検出をします。


関節内の皮膚の伸長や変形を検出するため、運動感覚(関節運動)を制御する上で重要な器官になります。


これにより物を握る時の強さを自動的にコントロールすることが出来ると考えられています。

触圧覚情報の他に、温覚情報を処理すると言われています。(※詳細は温度受容器で説明)

冷覚の感覚器よりも皮膚の深層に位置しているため、人間は温覚を検出する前に、冷覚を検出すると言われています。

SAⅡ型。受容野は広い。順応は遅い。皮膚の伸展・変形を感受します。




パチニ小体

パチニ小体は皮膚の中でも最も深い部分の、皮下脂肪層に存在します。


無毛皮膚と有毛皮膚の両方に存在し、構造はマイスネル小体と類似しています。


皮膚や粘膜の深層、骨膜、関節包、内臓、生殖器などに見られ、圧力と高周波振動を感知します。


皮膚ではメルケル細胞やマイスネル小体と比べて、パチニ小体とルフィニ終末の数が少ないです。

RAⅡ型。受容野は広い。順応は早い。圧の変化を感受し、振動に対する感度が高いです。




包毛受容器

毛包に神経終末がからみついたものが毛包受容器です。

毛の動き感知して、有毛部の触覚情報を処理します。



クラウゼ小体(クラウゼ終棍)

真皮や、口腔、陰部などの粘膜部に特殊なカプセル状の受容器のクラウゼ小体が存在します。


触覚情報の他に、温度情報も処理すると言われています。(※詳細は温度受容器で説明)





温度受容器

温度感覚は、皮膚上の冷点と温点によって検出されます。

ぬるめのお湯に浸かると初めは温かさを感じますが、時間が経つとこの感覚が慣れてきます。

これは温度に対して順応したからになります。

外部の温度にも影響されますが、冷点は約10℃〜35℃、温点は約30℃〜45℃で反応し、この範囲から逸脱した際には痛み刺激として感じます。


冷覚と温覚を司る温度受容器は、自由神経終末クラウゼ小体(冷覚)ルフィニ小体(温覚)とされていますが、未だに解明されていない部分もあります。



クラウゼ小体について問われた過去問(49P61・41-26)では、2問とも複数回答があるため不適切問題になっています。

49P61 皮膚感覚と受容器の組合せで正しいのはどれか。

  1. 痛覚 ー 自由神経終末 ○
  2. 温覚 ー Pacini(パチニ)小体 ×
  3. 冷覚 ー Meissner(マイスネル)小体 ×
  4. 触覚 ー Krause(クラウゼ)小体 ○
  5. 圧覚 ー Ruffini(ルフィニ)終末 ○

41-26 皮膚感覚と受容器との組み合わせで正しいのはどれか。

  1. 圧覚 ー ルフィニ終末 ○
  2. 温覚 ー パチニ小体 ×
  3. 触覚 ー クラウゼ小体 ○
  4. 痛覚 ー 自由終末 ○
  5. 冷覚 ー マイスネル小体 ×

標準理学療法・作業療法学 解剖学)では、クラウゼ小体は真皮に存在し、触覚に関係するとされています。

過去に『冷覚=クラウゼ小体』の設問は未だ出題されていませんが
クラウゼ小体は冷覚と触圧覚に関係すると覚えていいと思います。




侵害受容器

侵害性の刺激によって興奮する受容器を侵害受容器といいます。

皮膚の侵害受容器には、機械的侵害受容器、熱侵害受容器、冷侵害受容器、ポリモーダル侵害受容器があります。

触覚、嗅覚、味覚などの五感覚はそれぞれ特殊な受容器を有していますが、痛覚をおこす侵害受容器は特殊な受容器構造のない、AδやC線維の自由神経終末になります。


表皮、真皮、皮下組織をはじめ、腱や靭帯、骨膜など多数の自由神経終末が存在しています。

終末部は刺激を受容するための特殊の構造をしていないことから、この名前が付けられたとされています。


痛みには針で刺されたような急激な痛みと、ジンジンした鈍痛のような痛みがあります。

前者は主に機械的侵害受容器で受容され、後者の鈍い痛みは、ポリモーダル受容器で受容されます。




深部感覚受容器

深部感覚は、筋・関節などの深部組織に起こる感覚をいいます。


深部組織にある受容器には、

  1. 筋紡錘・腱紡錘
  2. 靭帯や関節嚢にあるルフィニ小体・ゴルジ終末・パチニ小体などの機械受容器
  3. 自由神経終末

などがあります。



類似問題

54P61 皮膚の侵害受容器はどれか。

  1. 毛包受容器
  2. Pacini小体
  3. Ruffini小体
  4. 自由神経終末
  5. Meissner小体

49P61 皮膚感覚と受容器の組合せで正しいのはどれか。(不適切問題)

  1. 痛覚 ー 自由神経終末
  2. 温覚 ー Pacini(パチニ)小体
  3. 冷覚 ー Meissner(マイスネル)小体
  4. 触覚 ー Krause(クラウゼ)小体
  5. 圧覚 ー Ruffini(ルフィニ)終末



49P62 複合感覚に含まれないのはどれか。

  1. 重量覚
  2. 部位覚
  3. 立体覚
  4. 関節位置覚
  5. 二点識別覚

46P61 皮膚覚(複合感覚)に分類されるのはどれか。2つ選べ。

  1. 二点識別覚
  2. 関節位置覚
  3. 部位覚
  4. 圧覚
  5. 振動覚

42-20 痛覚の受容器はどれか。

  1. 自由神経終末
  2. マイスネル小体
  3. ルフィニ小体
  4. パチニ小体
  5. メルケル盤

41-26 皮膚感覚と受容器との組み合わせで正しいのはどれか。(不適切問題)

  1. 圧覚 ー ルフィニ終末
  2. 温覚 ー パチニ小体
  3. 触覚 ー クラウゼ小体
  4. 痛覚 ー 自由終末
  5. 冷覚 ー マイスネル小体


39-24 痛覚について正しいのはどれか。

  1. 自由神経終末は侵害受容器である。
  2. Aδ繊維の伝達速度はC繊維よりも遅い。
  3. 後索を上行する。
  4. 視床下部で中継される。
  5. 皮質は痛みの認識に関与しない。

38-25 侵害刺激を伝達するのはどれか。

  1. 自由神経終末
  2. 毛包受容器
  3. パチニ小体
  4. メルケル盤
  5. マイスネル小体

37-27 皮膚の持続的圧刺激に反応するのはどれか。

  1. 自由神経終末
  2. ルフィニ終末
  3. マイスネル小体
  4. パチニ小体
  5. メルケル盤

35-25 感覚受容器でないのはどれか。

  1. 自由神経終末
  2. マイスネル小体
  3. パチニ小体
  4. 筋紡錘
  5. 上皮小体

34-25 触受容器でないのはどれか。

  1. ゴルジ終末
  2. パチニ小体
  3. メルケル細胞
  4. ラフィニー小体
  5. マイスネル小体

32-27 深部覚受容器に含まれないのはどれか。

  1. 筋紡錘
  2. 自由神経終末
  3. マイスネル小体
  4. パチニ小体
  5. ゴルジ終末

30-24 皮膚感覚と受容器との組合せで正しいのはどれか。(不適切問題)

  1. 痛覚 ー 自由終末
  2. 温覚 ー パチニ小体
  3. 冷覚 ー マイスネル小体
  4. 触覚 ー クラウゼ小体
  5. 圧覚 ー ルフィニ小体

参考文献

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