過去の出題傾向
押さえておきたいPoint!!
・出生後は体循環と肺循環によって体内の血液を循環させていますが、胎児期では特殊な循環システムをしています。
・胎盤に繋がる血管とその機能
胎児循環とは
私たちは呼吸により酸素を肺に取り入れ、摂取した栄養を肝臓で代謝し、各臓器から出た老廃物や余分な水分を腎臓で濾過して排泄しています。
それに対して胎児は、お母さんのお腹の中で「羊水」という水の中にいるため、生まれるまで呼吸することが出来ません。
そのため、酸素や栄養分を豊富に含んだ血液が、胎盤から伸びた臍の緒(臍帯)を通じて母体から胎児に送られます。
胎児から排泄された二酸化炭素や老廃物もまた、この胎盤を通り母体で処理されています。
胎盤の特徴として、胎児血と母体血は胎盤組織によって隔てられるため直接混じり合わずに、物質交換は毛細血管壁を介する拡散によって行われます。
胎児は酸素を胎盤から得ているため、肺に血液を送ってガス交換をする必要性がなく、肺にはほとんど血液が流れません。
また、肝臓で栄養を代謝する必要がないため、肝臓の門脈には入らずに直接、下大静脈に流入します。
このように胎児期のみに見られる、特殊な循環システムを胎児循環といいます。
胎盤形成と構造
女性の「卵子」と男性の「精子」が卵管の中で出会い、融合することを受精といいます。
受精卵は細胞分裂を繰り返しながら1週間程で卵管から子宮に移動します。
子宮内に到着した受精卵は、子宮の上部に着床すると胎盤の元となる絨毛が発生します。
胎盤ができる位置は、受精卵が着床した場所によって決まりますが、正常の着床部位より下方に着床してしまうと、胎盤が子宮の下方にある赤ちゃんの出口(内子宮口)を覆ってしまうため帝王切開が必要になります。これを前置胎盤といいます。
絨毛ができた部分は成長と共に厚みが増していき、妊娠7週頃から胎盤としての器官を作り始め、妊娠15週頃に完成します。
胎盤が完成すると初期流産のリスクが減り、つわりが始まる人が多いため「安定期」と呼ばれます。
完成するまでは卵黄嚢という器官から栄養を補っています。
胎盤の完成時は約100g程ですが、胎児の成長と共に大きくなっていき出産時には約500〜600gになっています。
胎盤に通じる動脈・静脈
臍動脈
胎児の左右の内腸骨動脈から分岐する2本の臍動脈は臍帯(臍の緒)を通り胎盤へ到達します。
胎児の二酸化炭素と老廃分を母体へ運ぶため、胎児の肺と腎臓の役割を果たしています。
出産後に役目を終え閉塞すると、臍動脈は臍層脈索に変わります。
臍静脈
母体の胎盤から出る1本の臍静脈は臍帯(臍の緒)を通り、母体から胎児へ酸素と栄養分を運んでいます。
出産後に役目を終え閉塞すると、臍静脈は肝円索に変わります。
類似問題
54P68 妊娠、出産で正しいのはどれか。
1.受精卵は着床してから分裂を開始する。
2.胎盤は着床前から形成が開始される。
3.妊娠中は、妊婦と胎児の血液の混合が起こる。
4.妊娠中はプロラクチン分泌が抑制されている。
5.分娩が始まるとオキシトシン分泌が減少する。
解答と解説
解答解なし
理由:選択肢に誤りがあり、正解が得られないため
1.×
卵子の中に精子が入って受精すると受精卵になります。
受精卵は細胞分裂を繰り返しながら1週間程で卵管から子宮に移動します。
分裂は受精後24時間以降、1〜2日で開始して、着床するのは胞胚期で受精後6〜7日です。
2.×
子宮内に到着した受精卵は、子宮の上部に着床すると胎盤の元となる絨毛が発生します。
絨毛ができた部分は成長と共に厚みが増していき、妊娠7週頃から胎盤としての器官を作り始め、妊娠15週頃に完成します。
胎盤が完成すると初期流産のリスクが減り、つわりが始まる人が多いため安定期と呼ばれます。
3.×
絨毛の働きにより、母体血と胎児血は混じり合うことはありません。
4.×
プロラクチンは、下垂体前葉から分泌されるホルモンで乳腺発育と乳汁分泌を担っています。
下垂体から放出されるホルモンは、視床下部によって調整されており、下垂体への刺激の調整を行なっています。
母乳を分泌する必要がない妊娠中でも血中プロラクチンは高値になりますが、これは下垂体前葉からの分泌ではなく、子宮内膜で産生されているためです。
子宮内膜が受精卵の着床ができる状態に変化することを脱落膜化といい、そこからプロラクチン(脱落膜性プロラクチン)を産生しています。
出典:ドクター竹田の周産期トピックス 第3回ホルモンはえらい!part2
妊娠や産褥期(妊娠により変化した体が妊娠前の状態に戻るまでの期間)には血中プロラクチン値は高くなりますが、これ以外にも女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌も促進されて、体が赤ちゃんを育てやすいように変化します。
エストロゲンとプロゲステロンは乳腺の発育を促す働きがある一方で、プロラクチンの作用にブレーキをかけて妊娠中に乳汁分泌が起こらないようにしています。
分娩後(出産後)には、エストロゲンとプロゲステロンの減少により、乳汁産生と分泌が始まります。
このため妊娠中はプロラクチン分泌が亢進していても乳汁分泌は起こりません。
また、赤ちゃんが乳首を咥えて吸う刺激によって視床下部を刺激して下垂体後葉からオキシトシンが分泌されます。
オキシトシンは乳腺と取り囲んでいる筋肉を収縮させて、乳汁を乳房から押し出す(射乳)働きがあります。
5.×
下垂体後葉から分泌されるオキシトシンには射乳や陣痛の誘発・促進の働きがあり、子宮収縮に働きます。
そのため分娩が始まるとオキシトシンの分泌が促進されます。
採点除外等の取り扱いをした問題になります。
https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2019/siken08_09/dl/kyotu_PM68.pdf
43P16 胎盤について正しいのはどれか。
- 母児間の血液が直接交流する。
- 受精後約2週で形成される。
- 胎児の成長に伴い大きくなる。
- 臍動脈と臍静脈が各1本接続する。
- 一般に子宮下部に付着している。
解答と解説
解答3
1.×
絨毛の働きにより、母体血と胎児血は混じり合うことはありません。
2.×
子宮内に到着した受精卵は、子宮の上部に着床すると胎盤の元となる絨毛が発生します。
絨毛ができた部分は成長と共に厚みが増していき、妊娠7週頃から胎盤としての器官を作り始め、妊娠15週頃に完成します。
胎盤が完成すると初期流産のリスクが減り、つわりが始まる人が多いため安定期と呼ばれます。
3.○
胎盤の完成時は約100g程ですが、胎児の成長と共に大きくなっていき出産時には約500〜600gになっています。
4.×
胎盤は臍動脈が2本、臍静脈が1本接続します。
臍静脈:母体から胎児へ酸素と栄養分を運ぶ
臍動脈:胎児から母体へ二酸化炭素と老廃分を運ぶ
5.×
子宮内に到着した受精卵は、子宮の上部に着床すると胎盤の元となる絨毛が発生します。
胎盤ができる位置は、受精卵が着床した場所によって決まりますが、正常の着床部位より下方に着床してしまうと、胎盤が子宮の下方にある赤ちゃんの出口(内子宮口)を覆ってしまうため帝王切開が必要になります。これを前置胎盤といいます。
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