大脳基底核に含まれないのはどれか。
- 被殻
- 網様体
- 淡蒼球
- 尾状核
- 扁桃体
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解説
大脳基底核(解剖学分野)の過去問の出題傾向を見比べてみると、そのほとんどが以下のような形式になります。
- 大脳基底核に含まれるor含まれないのは?
- 線条体の構成は?
- レンズ核の構成は?
これなら基本のポイントだけ覚えると正解できますね。
今回の問題では1.被殻・3.淡蒼球・4.尾状核は確実に選択肢から削ることができますが「2.網様体」と「5.扁桃体」で迷うと思います。
「2の網様体」が含まれないと思うけど、「5の扁桃体」は大脳辺縁系の属する部分だし、どっちだろ?
それでは、大脳基底核の構造と機能も含めて解説したいと思います。
大脳基底核の構造
大脳半球の表面を覆っている大脳皮質(灰白質)の下に大脳髄質(白質)があり、これを深く入っていくと神経細胞の塊である灰白質が散在しています。
この塊が大脳基底核と呼ばれています。
出典:大脳の前頭断面図 名称あり 著者: ミツキ (イラストAC)
https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=22532310&word=%E5%A4%A7%E8%84%B3%E3%81%AE%E5%89%8D%E9%A0%AD%E6%96%AD%E9%9D%A2%E5%9B%B3%E3%80%80%E5%90%8D%E7%A7%B0%E3%81%82%E3%82%8A
大脳基底核は脳の中心に集まっているんですね。
大脳基底核は尾状核、被殻、淡蒼球、視床下核(間脳)、黒質(中脳)からなり、これらに扁桃体と前障を加える場合があります。
扁桃体と前障は系統発生学的に他の大脳基底核と同じ起源という点、そして扁桃体には大きく分けて中心核、基底外側核、皮質内側核の3つの核があり、中心核と皮質内側核が解剖学的に大脳基底核の一部として捉えられています。
出典:大脳基底核のイラスト (看護roo!イラスト集)
https://www.kango-roo.com/ki/image_686/
- 線条体:尾状核+被殻
- レンズ核:淡蒼球+被殻
- 視床下核(間脳)
- 黒質(中脳)
- 前障
- 扁桃体
- ゴロ 「ハローキティは日々心を洗浄、日々鍛錬をして師匠と全国統一も目指す」
-
ハローキティ(大脳基底核)日(被殻)+々(尾状核)=洗浄(線条体)、日(被殻)+鍛(淡蒼球)=錬(レンズ核)師匠(視床下核)全(前障)国(黒質)統(扁桃体)
- ゴロ 「美人は比較せん」
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美人(尾状核)比較(被殻)せん(線条体)
- ゴロ 「比較的青いレンズ」
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比較(被殻)青い(淡蒼球)レンズ(レンズ核)
大脳基底核の機能
大脳基底核は錐体外路系の中継点であり主な働きは、目的や状況に合った運動を促進し、不必要な運動を抑制しています。
また、運動の開始や筋緊張の調整にも関与しているため大脳基底核に障害が起こると運動に異常(不随意運動)が見られます。
大脳基底核が障害されると他にも…
・ハンチントン舞踏病
・パーキンソン症候群
・ヘミバリスム
・アテトーゼ
・チック
・ジストニア などの症状がみられます。
この運動を制御する経路は「直接路」という運動を促進するものと「間接路」という運動を抑制するものがあります。
- 直接路
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線条体から淡蒼球内節と黒質網様部に直接連絡
- 間接路
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線条体から淡蒼球外節と視床下核を経て淡蒼球内節と黒質網様部に連絡
淡蒼球は淡蒼球内節と淡蒼球外節に分けられ、中脳黒質はドーパミン神経を含む黒質緻密部とGABA神経からなる黒質網様部に分けられます。
直接路・関節路モデルでは省略された繊維結合も多く、単純化しすぎているのではないかと批判も多い。
そのため近年では、大脳皮質→視床下核→淡蒼球内節路という経路が広く認知されており、直接路・間接路より早い伝達速度で出力核に情報伝達が出来るため「ハイパー直接路」と呼ばれています。
1. 被殻 〇
3. 淡蒼球 〇
4. 尾状核 〇
「1.被殻」「3.淡蒼球」「4.尾状核」は前述したように大脳基底核の一部になります。
ここは必ず押さえておきたいポイントですね。
- 線条体:尾状核+被殻
- レンズ核:淡蒼球+被殻
2. 網様体 ✖
網様体は脳幹(中脳・橋・延髄)において灰白質とも白質ともいえない部分であり、網状に交錯する神経線維からなっています。
脳幹全体をさす場合には脳幹網様体と呼ばれています。
この脳幹網様体は視覚、聴覚、触覚、痛覚、深部感覚など、さまざまな感覚情報を受けてさらに上方の視床や視床下部を経て大脳皮質の広い領域に送られています。
これによって大脳皮質を賦活して覚醒状態になるため、意識レベルの維持に重要な働きをしています。
このような作用系を上行性網様体賦活系(ARAS)といい、いずれかに病変を生じると、高度な意識障害が起こります。
また網様体脊髄路(橋網様体脊髄路・延髄網様体脊髄路)を通じて、体幹や四肢の骨格筋の筋緊張の維持や調整、いわゆる姿勢制御を行っています。
網様体脊髄路は橋網様体脊髄路と延髄網様体脊髄路の2つの経路からなります。
- 橋網様体脊髄路:橋の網様体から脊髄に下行する伝導路(体幹の筋を調整)
- 延髄網様体脊髄路:延髄の網様体から脊髄に下行する伝導路(四肢の筋を調整)
網様体も運動の調節という点では似たような働きをしていますが、大脳基底核は大脳皮質や視床、脳幹を結ぶ神経核からなるものなので大脳基底核には含まれませんね。
5. 扁桃体 △
今回の問題の鬼門でもある「扁桃体」ですね。
解説の所でも前述しましたが、扁桃体は系統発生学的に他の大脳基底核と同じ起源になります。
また扁桃体は10以上の亜核からなる複合核です。大きく分けると中心核、基底外側核、皮質内側核の3つに分ける事ができます。
このうち、中心核と皮質内側核が解剖学的に大脳基底核の一部として捉えられています。
しかし、近年の論文では大脳基底核の構成に「扁桃体と前障」を含まないものが多くみられるようになったと思います。
橋被蓋核が淡蒼球内節、視床下核、黒質網様部と相互に連絡し、線条体からは直接路・間接路を介して情報の入力を受けている事から大脳基底核の一部に含まれている論文もあります。
一般的でない点と学生が解くレベルでは無いので国家試験で問われる事はないと思います。
長々と述べましたが、一般的に扁桃体は生殖行動や摂食行動などの本能行動の調整に関わっている大脳辺縁系に分類されます。
この大脳辺縁系は複数の組織が集まった集合体であり、どこまでを辺縁系に含むかは文献によって違います。
過去問で出題傾向の分析や類似問題を解いて、よく出題される所は最低限把握しておきましょう。
他の選択肢を見ながら確実に間違っている物を選びましょう。
網様体が選択肢に含まれていなければ、「扁桃体」を選んでもいいと思います。
類似問題
55P51 大脳基底核に分類されるのはどれか。
- 視床
- 上丘
- 被殻
- 下垂体
- 歯状核
48A56 側脳室に接しているのはどれか。2つ選べ。
- 黒質
- 被殻
- 淡蒼球
- 尾状核
- 扁桃体
47P55 線条体を構成するのはどれか。2つ選べ。
- 前障
- 被殻
- 淡蒼球
- 尾状核
- 下垂体
45A54 大脳基底核はどれか。
- 嗅球
- 視床
- 淡蒼球
- 松果体
- 歯状核
44-9 レンズ核を構成するのはどれか。2つ選べ。
- 尾状核
- 被殻
- 淡蒼球
- 扁桃体
- 前障
43-20 頭部MRIを下に示す。正しいのはどれか。2つ選べ。
- 第3脳室
- 尾状核
- 松果体
- 視床
- 第4脳室
42-11 大脳基底核に含まれているのはどれか。
- 視床
- 黒質
- 赤核
- 尾状核
- オリーブ核
37-9 脳について誤っている組み合わせはどれか。
- 大脳基底核 - 淡蒼球
- 間脳 - 内側膝状体
- 中脳 - 大脳脚
- 延髄 - 四丘体
- 小脳 - 虫部
35-27 誤っているのはどれか。
- 大脳基底核は神経線維の密集した白質からなる。
- 尾状核と比較を合わせて線条体という。
- 被殻と淡蒼球をレンズ核と呼ぶ。
- 視床下核、黒質および赤核は錐体外路系である。
- 大脳基底核は姿勢保持の調整機構に関与する。
33-12 大脳基底核でないのはどれか。2つ選べ。
- 黒質
- オリーブ核
- 尾状核
- 被殻
- 淡蒼球
31-4 基底核に含まれないのはどれか。
ア. 淡蒼球
イ. 被殻
ウ. 尾状核
エ. 歯状核
オ. 赤核
- ア、イ
- ア、オ
- イ、ウ
- ウ、エ
- エ、オ
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