過去の出題傾向
大動脈弓から分岐する3つの動脈とその順番を理解しましょう。
近年では模式図として出題される事が多くなっています。
肺循環と体循環
生命を維持するためには、常に血液を全身に循環させる必要があります。
血液の循環はその目的によって、体循環と肺循環の2つがあります。
肺循環(小循環)
血液が、心臓と肺の間を移動します。
右心室から出た血液は左右の肺動脈を経て肺に入り、ガス交換を行います。
全身から戻ってきた二酸化炭素を多く含む静脈血は、肺のガス交換によって酸素に交換されます。
酸素化された血液は肺静脈を経て左心房に入り全身に送り出されます。
肺循環は右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房までの流れになります。
体循環(大循環)
血液が、心臓から肺以外の全身を移動します。
左心室から出た血液は上行大動脈→大動脈弓→腹大動脈→胸大動脈という順に太い血管を経て、各臓器や細胞に入ります。
そこで、酸素および栄養を供給し、二酸化炭素や老廃物を受け取った後、静脈に入り上大静脈・下大静脈を経て心臓(右心房)に戻ります。
体循環は左心室→動脈→細動脈→毛細血管→細静脈→静脈→右心房までの流れになります。
心臓は両方の循環の動力になっています。
細動脈、毛細血管、細静脈の循環は微小循環と呼ばれます。
解剖学的な大きさの観点から100μm以下の構造物と定義されており、国家試験でも微小循環というキーワードが出題されているため頭に入れておきましょう。
体循環の動脈系
心臓から出る動脈とその分岐
左心室の大動脈口から出て、心膜腔内を上行する上行大動脈は、心臓を出ると大動脈弓として左後方へ曲がり3本に分岐します。
- 腕頭動脈
- 左総頸動脈
- 左鎖骨下動脈
大動脈弓から①②③の順番で分岐します。
上行大動脈の基部は膨らんでいて大動脈洞(バルサルバ洞)と呼ばれています。
ここから心臓の栄養血管である、左・右冠状動脈が出ています。
左冠状動脈は前室回枝と回旋枝に分岐して、左心房や左心室、心室中隔の大部分に血液を送っています。
右冠状動脈は1本のまま分岐せずに心臓に後方に走行して、右心房や右心室の側壁から後壁、心室中隔の1/3に血液を送っています。
大動脈弓から分岐する動脈
腕頭動脈
大動脈弓から1番目に分岐する腕頭動脈は、右胸鎖関節の後方で右総頸動脈と右鎖骨下動脈に分岐します。
注意する点として、腕頭静脈は左右にありますが、腕頭動脈は1つしかないため名称に左右はつきません。
発生学上このような構造になっていますが、国試ではそこまで理解する必要はないと思います。
心臓が身体の中心より左側にあるので、右側に行く血管は距離が必要なので腕頭動脈があると紐付けて覚えて下さい。
左総頸動脈
大動脈弓から2番目に分岐する左総頸動脈は、甲状軟骨の高さで内頸動脈と外頸動脈に分岐します。
内頸動脈と外頸動脈が分岐した部位では、内頸動脈が外側に位置しており、上行するとともに外頸動脈の後方を通り内側に位置します。
外頸動脈は外側を走行する動脈という意味ではなく、「頭蓋の外を走る動脈」という意味であることに注意しましょう。
内頸動脈は、頭蓋外では枝を出さずに、頭蓋骨内に入った後、硬膜を貫く直前で、眼動脈を分岐します。その後、前大脳動脈、後交通動脈、前脈絡叢動脈を分岐し、中大脳動脈になります。
外頸動脈は、頭皮や硬膜を栄養し、基本的に脳実質を栄養することはありません。
舌動脈、顔面動脈、上行咽頭動脈、顎動脈、浅側頭動脈などを分岐します。
左鎖骨下動脈
大動脈弓から3番目に分岐する左鎖骨下動脈は、胸腔から出るまでに椎骨動脈の枝を出して、脳や脊髄を栄養します。
鎖骨下動脈は鎖骨後方の斜角筋隙を通り第1肋骨(または鎖骨下縁)で、腋窩動脈になります。
- 斜角筋隙は前斜角筋、中斜角筋、第一肋骨の間にできた間隙で、ここを鎖骨下動脈と腕神経叢が通過します。
この部位が原因でおこる神経障害を胸郭出口症候群と呼びます。
腋窩動脈は、大胸筋下縁で上腕動脈へ変わって上腕二頭筋の内側を通り肘窩で橈骨動脈と尺骨動脈に分岐します。
類似問題
50P59 大動脈から頭頸部に至る動脈の模式図を示す。動脈の位置と名称の組合せで正しいのはどれか。
1. ① ―――― 後下小脳動脈
2. ② ―――― 椎骨動脈
3. ③ ―――― 総頸動脈
4. ④ ―――― 腕頭動脈
5. ⑤ ―――― 鎖骨下動脈
解答と解説
解答2
1.× 示されているのは右椎骨動脈です。
図にあるような大きく弯曲した部位は、椎骨動脈の走行を理解すると部位が分かってきます。
椎骨動脈は鎖骨下動脈から分岐した後、第6頚椎より上位の横突孔を上行します。第1頚椎の横突孔を通過後に後方に向きを変えて椎骨動脈溝を水平に走ります。
その後、前上方に向きを変えて大後頭孔より頭蓋に入り、左右の椎骨動脈が吻合して脳底動脈になります。
椎骨動脈や頚動脈はこのように、弯曲しながら脳に達します。
頭部の運動時に動脈に過度な張力が加わるのを防いでいると言われています。
後下小脳動脈は椎骨動脈の最大の枝であり、小脳下部を主に栄養します。
小脳動脈は他にも前下小脳動脈や上小脳動脈がありますが、これらは脳底動脈から分岐します。
この図に枝は描かれていませんが、矢印がちょうど後下小脳動脈の分岐部のあたりであり、非常に迷ってしまう選択肢と思います。
2.○ 右鎖骨下動脈から最初に分岐するのは右椎骨動脈になります
斜角筋隙を通る前で椎骨動脈の枝を出した後、内胸動脈、甲状頚動脈、肋頚動脈などの枝を出します。
3.× 大動脈弓から最初に分岐するのは腕頭動脈です。
4.× 大動脈弓から3番目に分岐するのは左鎖骨下動脈です。
5.× 大動脈弓から2番目に分岐するのは左総頸動脈です。
49A58 正面から見た大動脈の模式図を示す。番号と血管名の組合せで正しいのはどれか。 2 つ選べ。
- ① ―――― 右総頸動脈
- ② ―――― 右鎖骨下動脈
- ③ ―――― 下行大動脈
- ④ ―――― 胸大動脈
- ⑤ ―――― 腕頭動脈
解答と解説
解答12
1.○ 右総頸動脈です。その後は外頸動脈と内頸動脈に分岐します。
脳・顔面に達する血管なので腕頭動脈からの分岐直後は上に向かっていますね。
2.○ 右鎖骨下動脈です。その後は椎骨動脈の枝を出し腋窩動脈になります。
3.× 腕頭動脈です。
4.× 大動脈弓です。
5.× 上行大動脈です。
39-14 大動脈弓から分枝するのはどれか。
- 右総頸動脈
- 右椎骨動脈
- 右鎖骨下動脈
- 左総頸動脈
- 左椎骨動脈
解答と解説
解答4
1.× 腕頭動脈から分枝します。
2.× 右鎖骨下動脈から分岐します。
3.× 腕頭動脈から分枝します。
4.○ 大動脈弓から分岐します。
5.× 左鎖骨下動脈から分枝します。
33-15 大動脈弓から直接分岐するのはどれか。2つ選べ。
- 左鎖骨下動脈
- 左総頸動脈
- 左椎骨動脈
- 右総頸動脈
- 右椎骨動脈
解答と解説
解答12
1.○ 大動脈弓から分岐します。
2.○ 大動脈弓から分岐します。
3.× 左鎖骨下動脈から分岐します。
4.× 腕頭動脈から分岐します。
5.× 右鎖骨下動脈から分岐します。
32-13 大動脈から分岐しないのはどれか。 2つ選べ。
- 冠状動脈
- 左鎖骨下動脈
- 左総頸動脈
- 右鎖骨下動脈
- 右総頸動脈
解答と解説
解答45
1.○ 大動脈は上行大動脈から総腸骨動脈までの身体の中心にある最も太い動脈になります。
大動脈弓ではなく大動脈について問われた問題なので間違えないようにしましょう。
冠状動脈は上行大動脈の基部の大動脈洞(バルサルバ洞)から枝を出します。
2.○ 大動脈弓から分岐します。
3.○ 大動脈弓から分岐します。
4.× 腕頭動脈から分岐します。
5.× 腕頭動脈から分岐します。
31-16 誤っているのはどれか。
- 右総頸動脈は腕頭動脈から分岐する
- 左総頸動脈は大動脈弓から分岐する
- 総頸動脈は外頸動脈と内頸動脈に分かれる
- 鎖骨下動脈は腋窩動脈に続く
- 両側の椎骨動脈は合して中大脳動脈となる
解答と解説
解答5
1.○ 右総頸動脈と右鎖骨下動脈は腕頭動脈から分岐します。
2.○ 大動脈弓から分岐する枝は腕頭動脈、左総頸動脈、左鎖骨下動脈の3つです。
3.○ 総頸動脈は外頸動脈と内頸動脈に分かれます。
4.○ 鎖骨下動脈は腋窩動脈→上腕動脈と続いていきます。
5.× 左右両側の椎骨動脈は合して脳底動脈になります。
28-6 大動脈弓から直接分岐する動脈はどれか。2つ選べ。
- 右椎骨動脈
- 右総頸動脈
- 左椎骨動脈
- 左総頸動脈
- 左鎖骨下動脈
解答と解説
解答45
1.× 右鎖骨下動脈から分岐します。
2.× 腕頭動脈から分岐します。
3.× 左鎖骨下動脈から分岐します。
4.○ 左総頸動脈は大動脈弓から直接分岐します。
5.○ 左鎖骨下動脈は大動脈弓から直接分岐します。
- 『解剖学 第5版(標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野) 』(出版社:医学書院)
- 『からだの動きの解剖生理学』 (出版社:金芳堂)
- 『休み時間の解剖生理学』 (出版社:講談社)
- 『目でみる からだのメカニズム』(出版社:医学書院)
- 『めざせ!血管エコー職人』(出版社:中外医学社)
- 『FANRA世話人総動員で作った新人さんのための動脈の基礎解剖!!』(福島血管撮影技術セミナー)
- 『画像診断cafe』
- 『頚動脈疾患のチェックポイント,IRYO Vol.60 No.11(716-722)2006』
- 『脳血管模型作成マニュアル,全国循環器撮影研究会誌.Vol.23 2011』
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