大脳辺縁系に含まれないのはどれか。
- 海馬
- 内包
- 帯状回
- 乳頭体
- 扁桃体
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目次
解説
大脳辺縁系は系統発生学的に古い大脳皮質(原皮質)により構成されており、大脳半球の内面で脳梁を囲むように位置しています。
複数の組織が集まった集合体であり、どこまでを辺縁系に入れるかは、文献によって異なるため過去問でよく出題される所は最低限把握しておきましょう。
一般的には海馬、海馬傍回、扁桃体といった機能的に重要な部位に加え、帯状回、中隔核、乳頭体、嗅皮質、側坐核、視床下部、視床前核、脳弓などが含まれます。
解剖学的には海馬体の一部の神経細胞層を持つ部位のみ海馬と呼びます。
海馬体は海馬台、帯状回、海馬で構成されています。
辺縁系は快不快などの情動や本能行動に加え記憶を司っている場所で知られています。
記憶の中で印象深い出来事などの情動を伴う記憶は忘れにくいですよね。
このように記憶と情動はセットになっています。
情動のない記憶としてサバン症候群や自閉症などの方が、本を丸ごと覚える(カメラアイ)事が出来ますが、大半は情動を伴うため認知症に対して回想法が使われるのも納得ですね。
この記憶と情動の回路としてパペッツ回路、ヤコブレフ回路があります。
Papez(パペッツ)回路
閉鎖回路であり記憶に関与している。
- ゴロ 「叶姉妹の乳みたいかい?」
-
か(海馬)のう(脳梁)ちち(乳頭体)み(視床前核)たい(帯状回)かい(海馬傍回)
Yakovlev(ヤコブレフ)回路
閉鎖回路であり情動に関与している。
- ゴロ 「返答しないで退場かい?」
-
へんとう(扁桃体)しない(視床背内側核)たいじょうかい(帯状回前方)
大脳辺縁系に含まれる部位以下の解説では、それぞれの場所や機能などを解説します。
1. 海馬
海馬は脳の外表面には見えず、側頭葉の内側部に隆起しておりタツノオトシゴのような形をしています。
様々な記憶に関与していますが、特に短期記憶に密接に関連していると言われています。
海馬の場所は過去問で問われた事があるので覚えておきましょう。
アルツハイマー型認知症の補助診断の一つとして脳CT・MRIで海馬の委縮所見がないかを確認することもあります。
2. 内包
内包は外側をレンズ核、内側を尾状核と視床に囲まれた神経束で、大脳半球の水平断では「く」の字状になっており、屈曲部は内包膝・その前後をそれぞれ内包前脚・内包後脚の3部に区別されています。
錐体路をはじめとする様々な伝導路が通ります。
パペッツ回路では視床から帯状回に向けての投射において内包膝部を通り、ヤコブレフ回路でも視床背内側核から前頭前野への投射において内包膝部を通ります。
そのため内包膝部梗塞では記憶障害が生じる可能性があります。
3. 帯状回
前頭葉から頭頂葉にかけて脳梁と平行に走る帯状溝があり、脳梁と帯状溝に囲まれた部位を帯状回といいます。
大脳辺縁系の各部位を連絡して情動や記憶の中枢として働いています。
アルツハイマー型認知症や鬱病をはじめ、統合失調症や不安障害に関わっていると言われています。
4. 乳頭体
視床下部の底部に乳頭体と呼ばれる隆起があり、その先端に下垂体がついています。
記憶の連絡の中継部位としてコルサコフ症候群の責任病巣になります。
コルサコフ症候群は記銘力低下・見当識障害・作話がみられる健忘症候群。
国家試験ではアルコールの離脱後の症状として問われる事多いですが、胃摘出手術後の低栄養や視床、乳頭体の責任病巣でも見られます。
5. 扁桃体
側頭葉内側に存在し大脳半球から様々な感覚情報を得て、身体内外で起こる快不快や恐怖などの判断を行い情動を引き起こす中心的な部位になります。
嫌いな虫に遭遇して逃げる・心拍数が上がるなどの情動を伴う体制運動や内分泌反応・自律神経反応と共に、生殖行動や摂食行動などの本能行動の調整に関わっています。
大脳辺縁系と大脳基底核に含まれるものは間違えやすく、混ざって覚えてしまう人もいると思うのでどちらも読んで理解しておきましょう。
>>大脳基底核の構成と機能の解説はこちらから↓
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大脳基底核に含まれないのはどれか。1.被殻 2.網様体 3.淡蒼球 4.尾状核 5.扁桃体 key word:扁桃体、前障
類似問題
52A58 大脳辺縁系とその働きの組み合わせで正しいのはどれか。
- 海馬 - 体温調整
- 嗅球 - 内分泌
- 視床下部 - 長期記憶
- 帯状回 - 運動学習
- 扁桃体 - 短期記憶
解答と解説
- ×
海馬は様々な記憶に関与しており、特に短期記憶に密接に関連しています。
体温調節の中枢は、間脳の視床下部にあります。
視床下部が体温調整に関わる司令塔の役割を担っています。
- ×
嗅球は嗅覚一次中枢であり、前頭葉の下方に位置しています。
匂いが引き起こす生理的効果は様々であり、例えばグレープフルーツの香りがアドレナリンを分泌を促し、脂肪燃焼効果をもたらしたり、ラベンダーの香りは鎮静効果があるなど、匂いの情報は扁桃体、視床下部などに情報を伝え、内分泌系や自律神経系への影響があります。
- ×
視床下部は間脳に位置し、内分泌や自律神経機能の調整を行う中枢になります。
これには、生命活動を維持するにあたって重要な、血圧、心拍数、体温調節中枢、摂食中枢、情動行動中枢など多くの自律神経機能の中枢になっています。
記憶には短期記憶・長期記憶・手続き記憶と様々あります。
海馬が短期記憶の中枢として記憶を保持し、その後は大脳皮質に情報が送られ長期記憶として保存されます。
- ○
帯状回は大脳辺縁系と連絡して情動や記憶の中枢として働いています。
小脳は大脳基底核と連携して運動の調整や運動学習などに関わっています。
- ×
扁桃体は情動を伴う体制運動や内分泌反応・自律神経反応と共に、生殖行動や摂食行動などの本能行動の調整に関わっています。
51P55 大脳辺縁系を構成するのはどれか。2つ選べ。
- 下垂体
- 松果体
- 線条体
- 乳頭体
- 扁桃体
解答と解説
- ×
下垂体は視床下部の下方に突出しており視床下部漏斗によって連結されている内分泌器官になります。
腺性下垂体(前葉・中間部)と神経性下垂体(後葉)からなり、後者は視床下部からの神経情報をもとに後葉ホルモン(バソプレシン・オキシトシン)が放出されています。
- ×
松果体は間脳の後方に突出しており視床の後方、第三脳室の後壁に隣接して存在しています。
メラトニンやセロトニンを生成し睡眠や概日リズム(体内時計)および、性成熟(性腺刺激ホルモン)の放出を抑制しています。
- ×
線条体は大脳基底核の一つであり、尾状核+被殻を合わせて言います。
大脳基底核は錐体外路系の中継点であり主な働きは、目的や状況に合った運動を促進し、不必要な運動を抑制しています。
- ○
乳頭体は大脳辺縁系に含まれています。
- ○
扁桃体は大脳辺縁系に含まれています。
48A54 Papez回路に含まれないのはどれか。
- 海馬傍回
- 視床前核
- 縁上回
- 乳頭体
- 帯状回
解答と解説
3. 縁上回は角回と共に下頭頂葉小葉を構成しています。
Papez(パペッツ)回路
閉鎖回路であり記憶に関与している。
- ゴロ 「叶姉妹の乳みたいかい?」
-
か(海馬)のう(脳梁)ちち(乳頭体)み(視床前核)たい(帯状回)かい(海馬傍回)
43-24 大脳辺縁系について誤っているのはれか。
- 海馬は陳述記憶と深い関係がある。
- 海馬は前頭葉の一部である。
- 乳頭体はPapez(パペッツ)回路の一部をなす。
- 扁桃体は食欲、性欲に関連した中枢である。
- 大脳辺縁系は発生学的に古い。
解答と解説
- ○
記憶の分類は大きく分けて陳述記憶と手続き記憶の2つがあります。
陳述記憶は意味記憶やエピソード記憶のような言葉で説明ができる記憶であり、海馬と深い関係があります。
手続き記憶は自転車の乗り方や、泳ぎ方など体で覚える記憶になります。これは、海馬ではなく、「大脳基底核」や「小脳」が深く関係しています。
- ×
海馬の位置は脳の外表面には見えず、側頭葉の内側部に隆起しています。
深部にあるため位置関係が分かりにくいですね。
- ○
Papez回路は海馬→脳弓→乳頭体→視床前核→帯状回→海馬傍回で構成されており、記憶の回路になります。
乳頭体はこの回路に含まれています。
- ○
扁桃体は情動を伴う体制運動や内分泌反応・自律神経反応と共に、生殖行動や摂食行動などの本能行動の調整に関わっています。
- ○
大脳辺縁系は系統発生学的に古い大脳皮質(原皮質)により構成されており、大脳半球の内面で脳梁を囲むように位置しています。
41-7 辺縁系に含まれているのはどれか。
- 縁上回
- 角回
- 中心前回
- 下側頭回
- 帯状回
解答と解説
- ×
- ×
縁上回と角回は共に下頭頂小葉を構成しています。
- ×
中心溝を境に脳を前後に分け中心前回と中心後回に分かれます。
中心前回には運動野(ブロードマンの4野)があり、第一運動野と呼ばれています。
- ×
側頭葉は上・中・下の3つに分けられれ、それぞれ上側頭回・中側頭回・下側頭回になります。
- ○
帯状回は脳梁と帯状溝に囲まれた位置にあり、大脳辺縁系の各部位を連絡して情動や記憶の中枢として働いています。
38-17 大脳辺縁系に属するのはどれか。
- 角回
- 縁上回
- 中心後回
- 帯状回
- 上側頭回
解答と解説
1.2 ×
縁上回と角回は共に下頭頂小葉を構成しています。
3. ×
中心後回は中心溝(ローランド溝)と中心後溝の間の隆起部位を指し、頭頂葉の最も前側に位置しています。中心溝の後方と覚えておきましょう。
4. ○
帯状回は脳梁と帯状溝に囲まれた位置にあり、大脳辺縁系の各部位を連絡して情動や記憶の中枢として働いています。
5. ×
側頭葉は上・中・下の3つに分けられれ、それぞれ上側頭回・中側頭回・下側頭回になります。
35-28 大脳辺縁系について誤っているのはどれか。
- 海馬は探索行動と深い関係がある。
- 海馬は前頭葉の一部である。
- 乳頭体はパペッツ回路の一部で感情発現と関連する。
- 扁桃体は食欲、性欲に関連した中枢である。
- 扁桃体は大脳基底核に分類される。
解答と解説
- ○
探索行動とは新たな環境下に置かれた際に動き回ったり、対象物に接近したり、環境構造の情報を収集し記憶することをいいます。
この機能には海馬が深く関係していると言われています。
- ×
海馬は脳の外表面には見えず、側頭葉の内側部に隆起しています。
様々な記憶に関与していますが、特に短期記憶に密接に関連していると言われています。
- ○
乳頭体はパペッツ回路の一部になります。
海馬を中心としたパペッツ回路と扁桃体を中心としたヤコブレフ回路、この2つは位置関係は隣接しており、相互に作用することにより情動や記憶に深く関係してます。
- ○
側頭葉内側に存在し大脳半球から様々な感覚情報を得て、情動を伴う体制運動や内分泌反応・自律神経反応と共に、生殖行動や摂食行動などの本能行動の調整に関わっています。
- ○
扁桃体は生殖行動や摂食行動などの本能行動の調整に関わっている大脳辺縁系に分類されますが、扁桃体の一部が大脳基底核として捉えられています。
他の選択肢を見ながら確実に間違っているものを選択しましょう
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